孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

2023年11月に読み終わった本リスト

20代もそろそろ終わりそうだけど、引き続き孤独に読書。

勉強のため?いや、シンプルに使わない知識や思想を頭に溜めるのが好きだから。

 

基準:

  • 当該月に読み終わった本が対象(※読み始めたのがその月とは限らない)
  • 最初から最後まで目を通した本を『読み終わった』と定義

 

昨月の記事:

2arctan-1.hatenablog.com

 

目次:

 

トヨタ生産方式

かの有名な「カンバン方式」を発案した、元トヨタ自動車副社長の大野耐一氏の著書。

トヨタの生産方式は少量多品種生産を低コストで実施するために突き詰められたものとなっている。その基本思想は『徹底的なムダの排除』であり、ジャストインタイムと自働化(ニンベンのある自動化)であり、安易に最新機械任せにするのではなく極限まで合理性を追求する。

トヨタ生産方式について解説された1,2章は全体的に贅肉が少なく理路整然とした読みやすい文章で、本書の要点だと思う(本書をビジネス書として消化するなら2章までで十分)。3章以降はトヨタの系譜やフォードシステムとの比較など、筆者自身の経験や視点を交えて語られておりこちらも興味深い。

 

 

 

決定版! 名字のヒミツ

古本市で3冊100円とかいう異常な値段で売っていたので、買ってみた。眉唾な話も沢山あるが、大筋は興味深い話が多く読んでて面白かった。

ざっくり言うと、日本は苗字の種類が10万種類以上と世界でもトップクラスで多いが世界一ではない(苗字数世界一は移民の多いアメリカで100万種類/密度はフィンランドが人口500万くらいに対して数万程度)。苗字の種類は韓国は50種類、中国でもせいぜい数千程度。名字と姓は別物で、公式の書類で登録される名称か近隣区民同士での区別で使われたかによって異なる。明治時代に戸籍制度が導入された時に『氏』という概念が導入され、そこに名字と姓を好き勝手書く人がいて現在のような苗字全体の多様性に繋がったetc……

雑学が好きだったり、自分自身が珍しい苗字である自負のある人は呼んでみるといいと思う。

 

 

先生のむな毛見ちゃった

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リンクなし!なんとネットで検索しても全く出てきません。

でも、実際に古本市で買ったしあすなろ書房から出てるちゃんとした本なんだよな。。。

内容としては神奈川の小学生たちが家族や学校のことを書いた詩や作文がまとめられたもの。低学年の子達は日常と地続きになった素朴な内容で、高学年になると街の景観や働きすぎてクタクタの父親に対する描写など、より問題を提起するような内容が増えている印象。選考委員のおっさんの女児に対するコメントが絶妙に気持ち悪い点もポイントなので、もしこの幻の本をどこかで見かけたら読んでみて欲しい。

 

データドリブン経営入門

デロイトトーマツのコンサルの人が書いた本。

データに基づいた経営上の意思決定を行うためのハウツーが薄く広く書かれている。「ダッシュボードは結局意思決定に何の役にも立っていないと経営層は気づき始めている!」などのデータサイエンス系の本で持て囃されているポイントの答え合わせみたいな指摘は面白かったが、全般的には読みやすいけどあんまり残らない本だった。

 

 

 

最強の漫才 東大と吉本が本気で「お笑いの謎」に迫ってみた

東大×吉本という掛け算が気になって買った。

科学的な観点のトピックは、芸人SNSのネットワークのクラスタリングの可視化、掴みが面白い場合とつまらない場合の観客の面白く感じた度の感性比較、吉本の劇場チケット売れ行きと関連ツイート数からM-1の優勝者を予測する、など。興味深い分析ではあるけれどもサンプル数が少なかったりして簡単な傾向予測に留まっており、現状では『やってみた』レベルの印象を拭えない。

お笑い側としては特にノンスタ石田、マヂラブ野田、笑い飯哲夫などのネタや笑いに対する言語化能力が高い第一線のチャンピオンたちの漫才に関する見解が非常に面白い。よ

 

 

 

旭化成構造転換の波動

宮崎県延岡市を中心に、旭化成の歴史や事業改革、地元企業との連携や交通・運送網、延岡の労働人口や人材教育、そして陸上部と柔道部の企業内実業団の話に至るまで幅広く書かれている。宮崎の新聞社が取材し出版しているから、地域に根差して「旭化成によりどう延岡に影響があるか」という視点でまとめられているのだと思われる。

旭化成の創業者野口遵(したがう)氏のエピソードは面白かったし(工場周辺の村長らに呼び掛けて延岡市の合併を口利きした、延岡にある愛宕山に登ってステッキでふもと一帯を指して「ここいら一帯の土地が欲しい」と言ったスケールのデカいエピソードすき)、旭化成の事業多角化や不採算事業からの撤退などの戦略的な総括章もなかなかだった。とはいえ、旭化成に興味のある人や延岡周辺出身の人でなければ全般としては退屈な本ではないかと思う。(ぼくはよんでてたのしかったです)

 

 

 

異世界ドロンジョの野望

ヤッターマンは小さいころキッズステーションかなんかの衛星放送でちょこっと見ていたくらいで何の思い入れもないのだが、なぜこの本を買ったかというと、著者のヤキトリこと大楽絢太氏のファンだからである。中学生の時にヤキトリの『七人の武器屋』シリーズを読み始めてからだから、もうファン歴10年以上……。

タツノコプロ60周年×富士見ファンタジア文庫35周年の記念事業の一環とのことだが、内容としては淡々とした印象に残るところのない話で別にヤッターマンのキャラクターじゃなくていいんじゃないかなって感じだった。ヤキトリ好きだから頑張ってほしいけど、良くも悪くもずっと文章がなんか素人っぽいんだよな……。

 

 

 

M-1はじめました。

書店で見つけてタイトルに惹かれて購入。M-1グランプリができるまでの歴史の裏側が語られたもので、2001年-2002年くらいまでの時間軸でマニアなら涎を垂らす興味深いエピソードが色々読める。

元々筆者である谷氏は常務に呼び出され、当時下火だった漫才を復興する「漫才プロジェクトをやれ」という辞令を元に仕事を始める。漫才を復興するために一人一人ベテランから若手まで漫才師と面談を行い『漫才大計画』という公演を始め、テレビで漫才の特番を組んでもらうよう交渉し、その最中島田紳助の助言もありM-1グランプリが始動する……。

大阪吉本在籍の漫才師全員への面談や、埋まらない漫才公演を何とか周知するための地元住民への地道なビラ配りだったり、ツテを探ってのスポンサー探し、仲の悪い大阪吉本/東京吉本間やM-1を訝しむ他芸能事務所への根回し、テレビ局との意識のずれを何とか調整・説得するなどなかなか泥臭い内容。今でこそめちゃくちゃ盛り上がっているM-1も最初はこんな逆風の中にいたんだな~という印象。

お笑いファンなら読んで損は無いと思う。巻末にはあの島田紳助からのコメントも寄せられています。

 

 

 

データ分析失敗事例集: 失敗から学び、成功を手にする

今年読んだ本の中でもかなり上位に来る一冊。

事例の中には読んでいて「わかる~~~~」ってなるような失敗事例や、読んでいるだけで胃が痛くなってくるようなものがある。

『とにかく最先端モデルを使ってなんかやれ!』という手段が目的になったプロジェクトや、上の意志にそぐわない分析結果が認められないプロジェクト、複数のステークホルダーが存在する中で優先順位をつけずあれもこれも意向を全て反映した結果見づらく混沌としてしまったダッシュボードの話など、単純にエピソードが面白くひしひしと共感できるところがある。データ分析専門の人に関わらず様々な業種の人に読んでみてほしい本だと思う。