孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

第43回ABCお笑いグランプリ(2022)感想

去年の記事はコチラ。

 

 

2arctan-1.hatenablog.com

 

今年もやってきました!

 

芸歴10年以内の若手芸人の登竜門、ABCお笑いグランプリです。

本大会はABCテレビでの放送のほかにAbemaTVでも同時生中継されており、非常に注目度の高い賞レースと言えます。昨年優勝したオズワルドはその勢いのままM-1グランプリで準優勝したし、同じく決勝に出場した空気階段キングオブコントで優勝しました。その意味でも、今年を占う重要な大会と言えます。

今年の出場芸人は下記です。

 

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常連でいえばカベポスターもいますが、12組中10組が初出場で非常にガラッとメンツが変わったように思えます。オズワルド、空気階段蛙亭etc...など去年でラストイヤーの芸人が多かったことも影響しているでしょう。

今年は全体的にフレッシュなメンツで、なおかつどのブロックもかなり実力が拮抗していて誰が勝ち上がるかわからない、非常に見ごたえのある大会だったと思います。

 

 

 

目次:

 

 

 

スペシャル漫才

オズワルド

去年より少しラフな格好での登場です。最初の文春を経てのつかみが流石です。

一か八か車の代わりにデートに車エビを持っていくという漫才で、割と前に見たことのあるネタでしたが安定して面白かったです。

 

 

コウテイ

下ちゃんの奈良時代に備中鍬で畑耕してる女やれや!のシャウトが響き渡り、かなりウケていたように思えます。去年もコウテイはかなりふざけた漫才をやっていた記憶がありますが今年もしっかりふざけきっていました。同じくだりを執拗に繰り返しているうちにどんどんおかしくなってくるとても面白いネタでした。

 

ミルクボーイ

上方漫才大賞を受賞し、ますます脂の乗っているミルクボーイです。去年は『うまい棒のアイツ』でしたが、今年は『ラジオ体操のコレ』で二年連続名称のわからないもののネタで攻めてきました。このネタは劇場でもよくやっているイメージがあり、内海の必死な動きも相まってめちゃくちゃ面白かったです。

 

Aブロック

全組が初出場というフレッシュなグループでした!かが屋とか意外にも初出場(しかも7年目!)なんですね。ドーナツ・ピーナツからかなりウケていて全体的に暖かい滑り出しだったと思います。ピン芸人のこたけ正義感が勝ち抜けでとても熱い展開になりました!

 

ドーナツ・ピーナツ

上方漫才大賞新人賞を獲っていたりと実力のある組で、しっかりトップで盛り上げた漫才だったと思います。

クラス替えが題材で、変な生徒がくじから次々出てくる大喜利的なところもあり、飄々としたボケとテンポのいいツッコミがとても見やすかったです。ボケ数も多くて会場も盛り上がっており、トップバッターとしてとても良いネタだったのではないでしょうか?

 

こたけ正義感

今大会唯一のピン芸人で現役弁護士というキャラクターの立ち具合です。

膨大な法律の中から変な法律・定義やおかしな罰則を的確に引っ張ってくるのがやはりプロの弁護士のスキルって感じですごいです。ただ面白い法律の内容を羅列するだけじゃなくてその魅せ方もスキルがあって個人的にかなり好きなネタでした。法律をネタ中で見方を変えて色々な角度からいじっており、4分間飽きずにずっと見られて面白かったです。この構成はこたけ正義感の芸人としてのスキルの賜物だと思います。

単純な『現役弁護士芸人』というキャラクターのみではなく、弁護士×芸人のスキルの掛け算的により広がりのあるネタになっているところが勝ち上がりの決め手になったんじゃないかなと勝手に思いました。法律という膨大な海の中にはまだまだ金塊は眠っていそうですし、これからも活躍に期待したいです。

 

青色1号

店長と常連バイトの寒いノリツッコミにずっと新人バイトが乗らされているという流れかと思ったら、新人バイトが本当に財布を盗んでいたという裏切りが最後にあって回収がすごく綺麗で面白かったです。やってる間ずっと、いつこのスピーディなノリツッコミが崩れるのかというひやひや感がありいい意味で緊張して見れるネタだったと思います。

ただ、かまいたち山内のコメントにもあった通り、ちょっと突然終わった感があって最後に新人が絡んでくるようなもうひと展開が欲しかった感は否めないです。

 

かが屋

茶店を舞台にしたネタです。かなりドラマみたいな不穏なつかみで、どのような一発目のボケで来るのかと思ったら恐怖で皿が震えるという挙動だけでめちゃくちゃウケてて凄かったです。10連勤のくだりもうまく回収していて、最後はハートフルな終わり方で綺麗に締まってました。

欲を言えば時間の都合上仕方ない部分はあったと思いましたが賀屋が終始悪役に徹しきっていたので、長尺でもっとナンパ男の賀屋の人間味が見れるところも見てみたいなと思いました。

 

 

Bブロック

ダークホースのダウ90000、ハノーバーに実力派と名高い令和ロマン、天才ピアニストがひしめくブロックです。組ごとにジャンルや面白さのベクトルが綺麗に分かれて全然重なっていなくて評価が最も難しく、大混戦だったと思います。

 

令和ロマン

Bブロック唯一の漫才です。令和ロマンといえばコントを軸にした漫才!というイメージだったのですが、いい意味で違った形の切り口で新鮮味を感じてとても面白かったです。

秋元康の顔を思いながら作詞した曲を聴くという設定で、イメージが共有されることでケムリの冷静で少し毒づいたツッコミがどんどん面白くなってきます。後半の美空ひばり川の流れのようにの歌詞が差し込まれるところの展開がすごくよく感じました。このネタの完成度でまだ5年目?とかでこれからというのがすごいです。来年以降も優勝争いに嚙んできそうですね。

 

ハノーバー

結婚のあいさつ。

お父さんとお母さんが似すぎててどっちかわからないという設定一本と入れ替わり立ち替わりに意味があって面白かったです。風貌を最大限活かしたネタで、絶妙な衣服チョイスおよび設定の活きたネタだったと思います。途中オチに絡んでくる妹が出てきてたと思うんですが、その部分でツッコミなどによるケアがなくてもやっとしたままになっており、最後の種明かしのところの爽快感がちょっと薄れているところが惜しいかなと思いました。

 

ダウ90000

まず賞レースで8人組というビジュアルのインパクトがすごいです。

独白という演劇での基本的な技法をメタとして使った『独白明けの判定が厳しい』という一本をしっかり通して4分の時間でしっかり面白く見れたと思います。コントという括りですが演劇寄りですべてがかなり特殊なので、賞レースの中で、最も判定が難しいタイプのネタだったんではないかな~と思いました。独白という単語の意味が今一つ客席に伝わるまでにラグがあり、そこでお客さんの反応が少しイマイチだった気がします。とはいえ、『独白』という単語の説明をそれとなくネタ中に入れてしまうと不自然な感じになってしまうのでこれはとても難しい問題だと思います。そもそも4分のネタに8人は明らかに人が多すぎて不利ですし、その中でこれだけ面白いネタをやったのはすごいと感じました。

 

天才ピアニスト

防犯訓練。明らかに変な校長先生を使った防犯訓練で生徒たちの反応を逐一諫める展開としてはシンプルなコントなんですが竹内のツッコミとタイミングが軽快で、ずっとテンポが良くて4分間ずー---っと面白かったです。恐らく関西勢で唯一コントを披露したと思いますが、関東のコント師のネタと比べるとまず強烈なキャラクターありきでつかみが早く、ボケ数が多くてどんどん話が進んでいくところが見やすく面白いと感じた主な要因だと思います。

敗退こそしましたが非常にクオリティの高いネタで、やはり天才ピアニストは今ノリに乗ってるんだなと確信しました。

 

 

Cブロック

カベポスターが二回準優勝の実績を見せつけるような安定感で制しましたが、Gパンパンダの勢いとウケもすごかったと思います。ヨネダ2000、フランスピアノも持ち味を存分に生かしたネタでとても良かったです。

 

フランスピアノ

一人吉田たち……もとい実力派コント師のフランスピアノです。

「ここだけの話」を場所で厳格に区分する変で頑固な大学生の設定一本で最後まで行く感じで、最後の最後のオチが一拍遅れて「……!?」と気づいた時にびっくりするような形でとても味わい深かったです(私の理解力が悪かっただけだと思いますが……)。

もう少し席ごとの断片的な『ここだけの話』が繋がっていてもよかった気はしますが、あまり話を繋げすぎるとわざとらしくなってしまうし、あのオチを考えるとやはり匙加減が絶妙だったんだなと思います。

Bブロックで結構印象の濃いネタが続いたので、少し薄く見えてしまったところはあるかもしれません。

 

ヨネダ2000

プロのおみこファー(正しい表記すらよくわからない)というネタで、ずっと何を言ってるかわからないけど何か面白く、納得してしまう不思議さを持っています。去年のM-1やTHE Wの時のネタと比べると愛が比較的困惑しながらもツッコミの要素が強く、ボケ・ツッコミとしての役割分担が結構明確に表れているネタだと思いました。賞レースに向けて受け入れられやすいネタをチョイスしたのかなと推測しましたが、ヨネダ2000は無茶苦茶で面白いという認知は色々なところで広まっているので、結果論になってしまいますがもっと二人とも何を言ってるのかわからないような奔放なネタで攻めてもよかったのかもしれません。

 

Gパンパンダ

わざとらしく飲み会に行きたい感を出すけど、本当は行きたくないのが表情からダダ漏れの一平の演技がめちゃくちゃハマってて、人となりがすごくネタ設定に活かせた面白いネタだったと思います。

途中でごまかし切れなくなって上司に飲み会本当は行きたくないですとカミングアウトしたところから続々と不満が出てくる感じがあまりにも正直すぎて、憎めないどころか愛らしささえ感じてくるところがとても良いです。優しい上司に対して「当たりだ~~~~~!!!!!」という魂のシャウトをしたところでめちゃくちゃ笑いました。

会場がすごいウケていたのもあって、本当にカベポスターとどちらが上がるかわかりませんでした。

 

カベポスター

割と前からやっていて何回か見たことあるネタですが、カベポスターらしい唸るような構成が光っており、クイズ部分のクオリティと気持ちよさが面白さに乗っかっててとても面白かったです。後半の展開が以前私が見た時と異なっていて、より話として面白く尻上がりに盛り上がっていくように改良されていて良くなっていました。

後半にかけてグッと盛り上げていく感じは圧巻で、初出場が多い今大会の中でどっしりとした安定感と実力を見せつけたと思います。永見のバキバキの目に、『本気』が伝わってきました……!

 

 

ファイナルラウンド

カベポスター

大声大会というテーマで、最初の立ち上がりから最後のオチまでどんどん盛り上がるすごいいいネタでした。ファイナルラウンドの中では頭一つ抜けて完成度の高い凄いネタだったと思います。

一本目より頭に入りやすいシンプルさがありつつも、次々畳みかけるような展開の面白さが気持ちいいめちゃくちゃ強い漫才でした!最後のオチまでとても上手くて、文句のつけどころがないのでは?と思ってしまいます。このネタを通して、カベポスターからABC優勝のその更に先のM-1グランプリを見据えているような気迫を感じました。

このネタを2本目に温存してることがカベポスターの経験の厚さの裏付けだと思いました。

 

令和ロマン

二本目はずっとケムリが泣き続けるかなり変則的な漫才でした。チャレンジングな内容でしたが、個人的に一本目よりも好きです。

途中の子供の泣き声が2番に入る転調のくだりがすごく面白かったです。欲を言うなら子供の泣き方や反応は色々なやり方があるはずなので、そこのバリエーションがもっと見たかったな~と思いました。

 

こたけ正義感

まさに今大会のダークホースで大活躍でした。

二本目は法律用語をわかりやすく説明するというネタで、一本目よりもシンプルでストレートなフリップネタになっています。言葉の意味の解説ということで、変換の大喜利力がダイレクトに活かされる分、より王道なフリップネタに近くなった感があり面白かったです。こたけ正義感は弁護士というキャラクターに留まらない非常にクレバーな芸人さんなのでこれから仕事が増えるのではないかと予想されます。というか、いろんな番組で見てみたいです。

 

 

 

 

総括

というわけで今年の優勝はカベポスターでした!

Cブロックの激戦を制し、2本目では圧巻の完成度のネタを披露してついに悲願の優勝となりました。個人的に今大会ではカベポスターを推していたので優勝はとても嬉しかったです!そして、M-1グランプリなど他の賞レースにも繋がっていくような仕上がりだったと思います。

準優勝が同率で令和ロマンとこたけ正義感というところも納得だったと思います。各ブロック誰が勝ってもおかしくない混戦模様で、先がわからない見ごたえのある大会でした。

 

 

カベポスター、本当に優勝おめでとうございました!!

 

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