孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

【2022年】読んで面白かった本トップ5

毎年書いてるオススメ本の紹介です。

 

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2022年は1年で計61冊を読了致しました。

今年は読むのに時間のかかる専門書を読んだりする機会が多く、とにかくいろんなジャンルの本を貪るように読んでいた去年や一昨年と比べたら読んだ本の冊数は少なくなりました。

しかしながら、今年も面白い本には色々出会えましたのでざっと紹介していこうと思います。

 

目次:

 

 

QRコードの奇跡

 

 

今年読んだ本の中で圧倒的にナンバーワンです。ちょっと面白すぎました。

デンソーQRコードを開発し、世界的に普及するまでの流れがまとめられている1冊です。トヨタカンバン方式の電子化から始まり工場の環境でも使えるQRコードが産まれるまでの前半部分の発明秘話だけでも充分読む価値はあるのですが、特筆すべきは3章の標準化の章です。

技術的には優れた2次元シンボルでありながらも米国企業の後発で、しかも島国日本で開発されたQRコードが何故標準化競争を勝ち残り世界的なスタンダードになれたのかについての経緯がしっかり1章使って書かれています。この点が個人的にこの本の素晴らしいポイントだと思います。

現場のニーズから優れた技術が生み出されるまで……だけではなくそれをいかにして普及させて市場を確立するかまでが書かれたとても面白い本です。是非ご一読ください。

 

 

ソニー半導体の奇跡ーお荷物集団の逆転劇

 

 

元々気になっていた本で、今年最後のKindleセールで購入したのですが大当たりでした。著者は元ソニー半導体事業部長であり、本書の内容は主に2000年代半ば〜10年代前半までのソニー半導体事業部に関する話となっています。

プレステ3内蔵の超高性能プロセッサの巨額投資の回収が厳しくなり売却の話まで出ていた半導体事業部が、裏面照射型CMOSイメージセンサーで盛り返すまでの経緯を内部の視点から、実名で『誰が』『何を』したのかが詳細に書かれていて読み応えがあります。

ほとんどが沈んでしまった日本の半導体事業で何故ソニーは生き残れたのかが知りたい人や、単純に企業特有の理不尽な人事異動やエピソードを見てニヤニヤしたい人にオススメです。

 

 

Winny 天才プログラマー金子勇との7年半

 

 

ファイル転送ソフトWinnyの開発者であり、京都府警によって有罪判決を受けた金子勇氏の弁護士が書いたノンフィクション形式の小説です。金子氏との交流エピソードや、京都府警との裁判の経緯などが本書を通して面白く読み進められます。

Winnyの有罪判決は『包丁に殺傷能力があるからという理由で製造者を逮捕する』くらい馬鹿らしいことだとよく言われますが、本書を読むとそのことがより理解できます。読み進めるうちにむちゃくちゃな論理を押し進めてくる京都府警のことがどんどん嫌いになっていきます(笑)。

ノンフィクションであるが故に最後の結末は後味が悪いものとなっており、常人が理解できないリスクを孕んだ技術をどう受け入れるべきか、考えさせられるものとなっております。

 

 

暗号の数理 作り方と解読の原理

 

 

古代暗号〜公開鍵暗号に至るまでの歴史及び数理的な基礎部分の説明、応用などが解説された1冊です。特筆すべきは著者が公開鍵暗号という翻訳を行ったいわば日本における暗号界の重鎮であるという点です。

戦争経験に基づいた暗号の応用例などはリアリティがあって面白く、楽しく読めると思います。暗号の原理の数式部分などは決して簡単というわけではないので焦らず自分のペースで読んでいきましょう。

 

 

スキャンダルの科学史

 

 

本書では明治〜戦後位までの日本で起きた科学界でのスキャンダルを十数章にわたって当時の新聞記事など共に解説されています。

現在の日本においても大きなスキャンダル以外は数年経つとすっかり忘れ去られがちですが、はるか戦前まで遡るとこんなスキャンダルがあったのか……という気づきと当時の日本の雰囲気をを感じられて面白いです。

スキャンダルの内容も似非科学、研究不正、自死収賄など様々で飽きずに読めると思います。個人的には野口英世自死説の流布、北里柴三郎とその師との脚気菌説を巡る対立、戦後日本でサイクロトロン利用が認可されるまでの経緯などの章が特にオススメです。