孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

2023年9月に読み終わった本リスト

10月も終わるか終わらないかでようやく9月の読み終えた本の感想まとめ。

 

基準:

  • 当該月に読み終わった本が対象(※読み始めたのがその月とは限らない)
  • 最初から最後まで目を通した本を『読み終わった』と定義

 

 

昨月の記事:

2arctan-1.hatenablog.com

 

目次:

 

 

トラブルをさけるための仕様書とコストダウン

めっちゃ昭和のメーカーって感じの本で、よもやま話が面白い。

筆者がエレキ屋さんかつチップ化がそもそも普及し始めたくらいの時の本なので、システムをチップ化していくことや電源回りに関するコストダウンの話から始まって、とにかく在庫を抱えるな!、設計の段階で使うビスなどの部品を統一しろ!などごもっともなことを言っている。

かんばん方式とメカ屋(機械設計)に対してほんまにボロカス書いていて面白いので、メーカー勤務の人は古本屋で見かけたら読んでみてほしい。

 

 

 

談合破り!―役人支配と決別、命がけの攻防記

岐阜県の格安ビジネスホテルに泊まった時にオーナーの出した本として置いてあった。経営者のブラック感はありつつも、岐阜市役所の明らかに誠実さにかける話は読み応えがある。例えば『任意』と言いながら施行前の祈祷式を実施させ費用を会社に負担させる、前例がないからという理由で効率的に工事を行うための要求を却下する、さらに工事の規格に関して規約違反を言う割に根拠の部分は黒塗りで市側の見積もり根拠は一切開示しない、など。

公共施策のドロドロなやり取りと煮え切らない結末を見たい方にオススメ。

 

 

 

実録ブラック仕事体験記―――パワハラ、洗脳教育、サービス残業当たり前!★裏モノJAPAN

例のごとくブックオフに置いてあって『たまにはこういう俗っぽいルポも読みたいな』と購入。パワハラや過重労働が横行する意味のブラック仕事、普通の人がやりたがらない仕事という意味のブラック仕事、そして最後は意外と知られていない仕事の実態の大きく3部構成となっている。最後はブラック仕事ではないだろ、というツッコミはなしで。

飲食やアパレルチェーン、大手ECの倉庫作業などはよくネット記事で取り上げられてるような内容の話なのでまあまあという感じだったが、下水道検査やバキュームカー清掃などの汚れ仕事、後は町のタバコ屋さんなど知られざる職業の話は面白かった。

よくも悪くもエログラビアが載っているような雑誌におまけ程度についてある記事がまとめられたものであり、別段情報の裏付けがあるわけでもないので「ふーん」と話半分に見る程度の本。

 

 

 

松本人志『定本・一人ごっつ』

松ちゃんが1人で大喜利などで面白さを追求していた番組一人ごっつの回答、インタビューなどをまとめた本。この本が出た時期の松ちゃんは一人での活動やライブに力を入れ、映画監督などを手掛ける一番『神格化』されていた時期じゃないかなと思うので、全体的に文とかインタビューの受け答えがギラギラしてる。

大喜利の回答とかは2023年現在ではさすがにかなり古いというか、ベタに感じるが、その当時はかなり先進的だったんだろうなと思う。岡本太郎の本を読んだときに思ったことと大体同じような感想を抱いた(『自分の中に毒を持て、常識にとらわれるな』みたいな文言今となっては割とよく言われることだけど、当時としては革新的だったんだろうな~という点で)。

 

 

 

 

画像認識 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)

特徴量を駆使した古典的手法からCNNまで。

畳み込みニューラルネットワークに関する話はAI本に何かしら書いてるため、まあまあという感じだったが古典的な画像認識技術に関する解説が非常に参考になった。画像から何とか分類に必要な特徴をうまいこと抽出するためのフィルター作ってるんだなぁ……と過去の偉人たちの努力に感動すると共に、この部分を自動化したCNNはブレークスルーやったんだなぁと感じた。

いわゆる古典的な画像認識手法とCNNの各層の処理の対応付けがこの本でイメージできたので、それだけでも読む価値はあったと思う。

 

 

コロナ vs. AI 最新テクノロジー感染症に挑む

全体的にコロナ蔓延の状況を踏まえたAIとロボットを活用したサービスや取り組みの事例集って感じ。ネット記事の寄せ集めみたいな感じで読み応えや本としてのまとまりはないけど、まあ情報は得られるって感じ。
特別付録のオードリータンのインタビュー価値あるかと思ったら、それも普通に動画公開してあるらしい。高級リンク集ですね(自分はブックオフで220円で買ったからまだいいけど、定価で買うとなると……)。あと、全般的に載っている事例に関してはコロナ終わったあとの陳腐化は激しそう。

 

 

ライトノベル新人賞攻略

時間つぶしで入った市営の図書館にて発見。実は自分は10年以上前はライトノベル法研究所を見てお作法を勉強しながら何本かネット小説書いた過去があるので、懐かしくなって流し読み。

三点リーダーは偶数個、感嘆符の後は1マス空けようみたいな文法の話から、ラノベ以外の本も色々読もう、ちゃんと文献調査をしようといった話まで書かれてる。書かれてることはごもっともだが、間の会話劇とか載ってあるショートショートの話のユーモアには古さを感じる。あの時はこういうの面白いと思ってたはずなのに……と切ない気持ちになった。

 

 

Mother Machine 工作機械で世界に挑み続けたマザックの100年

岐阜の美濃加茂市にあるヤマザキマザック工作機械博物館を見に行った時に記念に購入。

石川県出身で元々旋盤工として働いていた山崎定吉が山崎鉄工所を起こし、工作機械を手掛け、そして息子の照幸がグローバルに会社を発展させていくまでの話が中心に書かれている。ヤマザキマザックの今の社長は4代目だが、3,4代目の社長の業績は最後の1章でざっと流されている。戦時中に工作機械の製造許可業者から漏れたり、工場が焼夷弾で壊滅したり、アメリカの工作機械受注で足元を見られ大損したりと歴史の長いメーカーは相応に苦難に満ちた歴史を歩んできたんだなと思う。

この本を読んでヤマザキマザックが強いなと思ったところとして、海外への営業網や製造拠点を早い段階から海外に乗り込んで現地に築いたことだと思う。それとプログラミングの専門技能が必要かつ高価だったNC工作機械を誰でも使えるインターフェースで安価で提供したQUICK TURNは革新的だと思った(キックオフから一年足らずで開発に成功するのヤバすぎるから、ここもう少し詳細知りたかった)。

企業関係者ではなくライターの方が取材をもとに書いた本ということもあり、情報が薄い部分が結構あるのが残念(創業時のエピソードにはっきりしない点が結構あるので、あんまし資料が残っていんだと思う)だが工作機械の歴史をサッと見れる本で読んでよかったとは思った。