孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

パチンコの経済学 【ブックオフ珍書発掘隊 その17】

ブックオフ珍書発掘隊!!

 

 

というわけで、10月最初のブックオフ珍書発掘隊である。

前回、前々回とヤバい珍書を発掘してきたので今回はもう少しまともそうな珍書を発掘していきたいと思う。

今回は日本人が大好きなあの国民的遊戯に関する1冊を取り上げた。ギャンブルが好きな人も、興味ない人も全員この1冊で業界に詳しくなれるはずだ。

 

 

 

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パチンコの経済学/著: 佐藤仁

東洋経済新報社

2007年3月2日発売

購入価格:210円(定価:1,500円+税)

 

珍書度:★

内容のまとも度:★★★

おすすめ度:★★★

経済学ではない度:★★★★★★★★★★★

内容広く浅い度:★★★★★

情報古い度:★★★★★★★

 

 

本発掘録の目次:

 

 

1. なぜ本書を選んだか?

私は二十数年の時を生きる中で多くの人が経験するメジャーなものから珍しいものまで色々な経験を積んできたが、実はまだ経験していないことが幾つかある。その中の一つがパチンコである。

同じギャンブルでも競馬などは付き合いで行ったことがあるのだが、パチンコは店内の音がうるさすぎて無理だから一回もやったことがない。だが、パチンコが好きな人は身の回りに多いのも事実である。別にやってみたいとは思わないが、パチンコにハマる人たちのモチベーションなどは気になってはいた。

そのような背景の中で本書をたまたまブックオフ店内で見つけたので、発掘してみることにした。

考えてみると、競馬等の公営ギャンブルで真面目な本はそれなりに読んだことはあるが、パチンコを題材とした書籍では読んだことがない。そんな中でこの真面目な内容っぽい本書は非常に興味深い。

そして恐らく中毒レベルでパチンコにハマっている人はこんな活字でびっしりの本には手を出さないだろうし、パチンコなどのギャンブル業界を志望する就活生などがこの本を手に取るかも微妙である(というかそんな就活生はどれくらいいるのだろうか)。

 

絶妙に立ち位置が微妙な本書を発掘するのは、パチンコ未経験者の私が最適ではなかろうか。

パチンコに関して耳年増になることを目標に、本書の発掘を試みることにした。

 

 

 

2. 書評

2.1 本書の概要

大手パチンコホールチェーン『ダイナム』の役員を務めた筆者が、パチンコ業界の内情や展望などをありのままに話した1冊である。

内容は経済学的な観点のみならず、パチンコに関する様々なトピックを広く取り扱っている。

パチンコの成り立ちや発展に関する歴史、技術的な話、既得権益、釘調整などの業界のグレーゾーンに関するトピック、法律的な話、そして外国などにあるカジノのスロットマシーンと日本のパチンコ・パチスロとの違いなど……。

全8章構成で、パチンコ関連の当時のホットな話題を満遍なく拾ってきたような印象だ。『詳しくは~~という書籍を参考にしてほしい』という他所に投げるような記述は少し多いものの、満遍なくパチンコ業界を知る上で必要な話題をカバーしていると言えるだろう。

 

一つ注意してほしい点としては、本書は2007年に刊行された一冊であるので全ての情報やデータが古いということだ。10年以上前の話ゆえに現代のパチンコ業界からしたら古い情報が多分に含まれているだろうと思われるところだ。

たとえば本書で一章を割かれて語られていた日本のカジノの導入に関する話について有望視されているような記述があるが、10年以上経った現在も未だに実現には至っていない。一方で、当時の記述ではこれから導入されていくかもしれないと言われていた1円パチンコなどの単価の低いパチンコは今では当たり前のように至る所で導入されている。

パチンコをやっていない私でも色々気が付く点はあったので、パチンコを嗜む人からしたらより気付く点もたくさんあるのではなかろうか。

 

 

2.2 経済学というよりは概論

パチンコの経済学というタイトルではあるが実際には経済学的な話は少なく、どちらかと言えば過去のパチンコの発展・問題点などに関する歴史や現状などについて広く浅く解説した『パチンコ概論』、『パチンコ学入門』とでも言うべき様な内容になっている。

もちろんパチンコ市場の売上や収益、客層などについては2〜3章などである程度触れられている。

だが、それよりかはどちらかと言えば現状のパチンコの既得権益やグレーゾーンに関する記述が多く、経済学的な記述はそんなに多くはない。パチンコにまつわる様々なトピックを可能な限り詰め込んだといった印象だ。

 

 

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↑客数が減少してるのに単価を上げて利益をキープできるあたり、パチンコが特殊な業界であることが分かる。

 

本書内で取り上げられているパチンコの売上データ及び客数の指標などは興味深い。さすがは30兆円市場といわれるだけのことはある。

客足が減ってるのに売上はほとんど変わっていないのだ。その実態は射幸心をくすぐる演出や仕組みで少人数の客により多くのお金を出させているという仕組みである。飲食や家電などあらゆる業界では熾烈な値下げ競争が行われてきた一方、パチンコ業界は真逆の作用が働いている。

 

 

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↑パチンコメーカーは従業員数に対して非常に売上が高い。住友重機械と比較してるデータを見てビックリした。

 

筐体を作っているメーカーの利益率や売り上げは恐ろしいものがある。東証一部にも上場していて、同程度の売り上げのメーカーと比較すると圧倒的に社員数が少ないことが分かる。まさしく圧倒的穴場である。実際、求人などを見てみるとなかなかの好待遇であることが伺える。寡占状態で美味しい思いをしているんだなあと率直に羨ましいなと感じた。

 

広範なトピックをここで全て取り上げることはできないが、経済学の本ではないという部分を理解しておけばそれなりに楽しくためになる一冊となるはずだ。

 

 

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下流ほどギャンブル好き(ド直球)

 

 

3. 総評

実際に読んでみると経済学的な一面は少なく、パチンコ・パチスロ業界の歴史や仕組みなどについて広く浅く解説した入門書という印象だった。とはいえ、幅広くパチンコ業界を網羅した1冊ということで興味本位で読むにはちょうど良い内容だった。

この本を抑えることで、今後のパチンコ業界の流れなども感じられるようになるのではないだろうか(カジノとどう競合・棲み分けしていくかが気になる)。

より掘り下げたい人には物足りないかもしれないが。

 

 

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繰り返しになるが本書は2007年に刊行された書籍なので、全般的に情報が古い。その点はご留意して読んでいただきたい。

 

 

To Be Continued...