孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

ジャニーさんに愛される息子に育てる法(アイドルの掟1) 【ブックオフ珍書発掘隊 その13】

ブックオフ珍書発掘隊!!

 

 

カリスマ経営者。

1代で事業を起こすとあっという間に市場を席巻する存在へと成長し、トップに君臨し続ける。

今回の珍書は芸能界で長年とてつもない影響力と存在感を放ち続けている超有名事務所の創始者に関する1冊を取り上げる。

 

 

f:id:kaku90degree:20200826221248j:image

 

ジャニーさんに愛される息子に育てる法/著: 小菅宏

竹書房

2013年11月14日発売

購入価格:210円(定価:1,300円+税)

 

 

 

珍書度:★★★

内容のまとも度:★★★★★

オススメ度:★★★

タイトルと実際の内容のギャップ度:★★★★★★★★★★★★★★★★

ジャニー喜多川の少年への執念度:★★★★★★★★★★

 

 

本発掘録の目次:

 

 

 

1. なぜ本書を選んだか?

 キャッチ―なタイトルに惹かれたというのが一番な理由である。

 

帯に書かれた『今、正しい日本男児は”ジャニーズ系”である』という強気な煽り文句はたとえジャニーズファンでなくても否応なしに目が留まる。

そしてタイトルからわが子をジャニーズに入れたい人に向けたハウツー本っぽかったので、「そんなもん結局顔だろ……」などと思いながら購入した。

後述するが、本書はそのような軟派なハウツー本とは全く異なる内容だったので、その点では裏切られたと言える。

 

 

 

2. 書評

2.1 本書の概要

まず本書は、『わが子をジャニーズに入れるための本』ではない。『ジャニーさんがどんな少年を重要視しているか』についての分析が述べられた一冊である。

 

 そして、ジャニーさんに愛される少年の特徴については詳しく掘り下げられている一方で、具体的にどうすればジャニーズに入れるような息子に育つのかなどといった情報は一切存在していない。タイトルはほぼ詐欺である。

加えて本書は文体が結構固く、持って回ったような文章で少し読みにくさがある。

本書の著者はジャニーズウォッチャー歴がなんと45年、ジャニーズ創世記からジャニー喜多川と交流があるジジイ超ベテランである。年齢的な意味で少し堅苦しい文章になっているのかもしれない。

普段活字を読まない層、それこそジャニーズのキラキラした内容の書籍を期待して本を手に取った主婦層にはちょっと読み続けるのがしんどいのではないだろうか。 

 

本書の内容はまず序章でジャニー喜多川自身の来歴について軽く触れたのちに、著者の考察するジャニー喜多川が求めるジャニーズとしての10ヶ条が提示されている。

ジャニー喜多川はほとんどメディアに露出することなく、自身が明確に何かを発することはなく裏方に徹している。それゆえ、ジャニー喜多川自身が明確に自身について、あるいはジャニーズについて執筆した本は存在しない。

 

本人の言葉で語られていないのは少し残念ではあるが、本書の著者は長年ジャニーズを追い、ジャニー喜多川に取材をし続け、かなりの数のジャニーズ関係の本を執筆してきたジャニーズ著書のベテランである。それゆえ本書の内容はかなりジャニー喜多川の本質を捉えているのではないかと思われる。

 

 

 

2.2 ジャニー喜多川が愛する少年とは?

本書に述べられているジャニー喜多川が少年に求める10箇条は以下の通りである。

 

  • 清潔感
  • 笑顔
  • 性格(キャラクター)
  • 親近感
  • 運動能力
  • 笑い
  • 友情
  • 家族愛
  • 夢を抱く者

 

……結局まず顔かい、ということは置いておくとして、これらを全て高水準で満たすことは、並々ならぬ難易度である。

 

f:id:kaku90degree:20200828221849j:image

 

 

『好きになった子しか一生懸命になれない』という言葉通り、結局はジャニーさんの好き嫌いによってほぼ全て決まるようだ。シンプルが故に強力な採用条件である。

このジャニー喜多川の今まで採ってきた少年たちの傾向から筆者が分析したのが上記の10ヶ条ということになる。

 つまり、外面から内面に至るまで美しい少年でないと、ジャニー喜多川のお眼鏡にかなうことはないということである。

条件として記述されている内容には先天的な要素が多く(特に顔)、実際にはやはり生まれた時点での天性の素質+良い環境に囲まれて育つということが必要になってくる。

ジャニーズに活躍するような人たちははまさに天性のスター性を持った、庶民では手の届かない高嶺の花といったところだ。 

 

本書内の記述で他に目を引く点として、ジャニー喜多川は自身がプロデュースしている少年たちについて、『タレント』や『アイドル』などと呼ばれることをかなり嫌っていることがわかる。

 

 

f:id:kaku90degree:20200828221018j:image

ジャニー喜多川の考えるジャニーズは、世間でちやほやされるタレントやアイドルとは異なるものであるということがわかる一部分である。 

 

f:id:kaku90degree:20200828222145j:image

 ↑AKBなどを筆頭に台頭した『会いに来てくれるアイドル』はジャニーの創ってきたものとは一線を画す存在ということ。その違いにはファンのメイン層の男女差などもあろうが……。

 

 

ジャニーズのバックグラウンドは、世間で消費されるタレントやアイドルではなくジャニー喜多川の求める『スター』を育成するところにある。

歌って、踊れて、演技ができるジャニーズ。ジャニー喜多川の夢は自分の劇場で自分の原作・脚本・演出の和製ミュージカルを実現することだという。彼がジャニーズに選ぶ少年たちはみなその夢を実現するための仲間ということらしい。

ひたすらに夢を追い続け、一分一秒でもファンを飽きさせないように努力をし続ける。

ジャニー喜多川のそのような果てしない夢の元でジャニーズは形作られ、その夢の中に厳しいオーディションを勝ち抜いて数多くの少年たちがデビューしていくのだ。

 

 

 

3. 総評

タイトルと帯のあおりから見て、「息子をジャニーズに受からせるためにはどうすればいいのか?」という怪しげな本を想像したのだが、現実にはジャニー喜多川を長年見続けてきた著者による、ジャニー喜多川の求めるスターの条件を考察するという濃厚な一冊だった。

実際息子をジャニーズに入れたい!っていう夢見がちなママさんが読む内容ではない気がするが、ジャニーズの成り立ちなどについてより詳しくなりたいという方にとっては一読の価値はあるのではないだろうか。

 

 

ジャニー喜多川が亡くなってはや一年以上経つ。

カリスマ社長を失ってから、退所をしたりするメンバーが多数出て、ジャニーズ全体が非常に激動の時代であるように感じている。ジャニーズのファンでもない私ですらそう感じるくらいにジャニーズはゴタゴタしているように思える。

ジャニーズに所属する人気グループのメンバーは一人一人がとんでもない数のファンを抱えている。理由や経緯はどうであれ、事務所に所属するよりも個人として活動することを選ぶタレントもこれから沢山出てくるかもしれない。

 

一方で、ジャニー喜多川の意志を受け継ぎ、矜持を持って活動するジャニーズのメンバーに従来のファンはより魅了されるのではなかろうか。

とにかく、ファンからしたら大変でドタバタした時期ながら現在はかなり全体としてジャニーズは面白い時期に来ているのではなかろうか。そう、ジャニーズファンではない一介のオタクである私はぼんやり思っていたりするものである。

 

余談だが、本書の副題は『アイドルの掟①』と書かれているが、2020年8月現在アイドルの掟②に相当する書籍は発売されていない。

 

 

[http://:title]

 

 

 

To Be Continued...