孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

あなたの自然治癒力が目覚める!【ブックオフ珍書発掘隊 その19】

ブックオフ珍書発掘隊!!

 

 

医療が発達した現在でも、ガンやエイズや数々の精神病など治療は困難な病気は沢山ある。

 西洋医学をベースに発展した科学的な治療は今なお発展し、細胞、さらには分子レベルでの研究が進められているが有効な治療法が見つかっていないものはまだまたま多いのが現状だ。

 

しかしながら世の中には、不治の病と呼ばれるような病を患いながらも完治した事例も存在する。人間の身体には病気に打ち勝つ治癒力が根本的に備わっている。現代医学も匙を投げる病気に対抗できる可能性があるのは、結局は自分自身の内なる力である。

今回紹介する珍書は、そのような人間の内なる力に問い掛ける自然派な1冊である……。

 

 

 

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あなたの自然治癒力が目覚める!/著: 帯津良一

青春出版社

2000年2月1日発売

購入価格:110円(定価:870円+税)

 

 

 

珍書度:★★★★

内容のまとも度:★★

おすすめ度:★

『ポテンシャル』の登場頻度:★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

本発掘録の目次:

 

 

 

1. なぜ本書を選んだか?

ブックオフの教養・雑学の分野の文庫本が置いてあるコーナーにメディカルと呼ばれる区分があり、その中にこの本のみがひっそりと挟まれていたからである。

 

『薬よりも医者よりも、あなた自身の力が病気を治す』

 

という謳い文句に似非医療系の胡散臭さを感じ手に取ることにした。

 

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著者情報を見てみるといかにも圧が強そうなおじいちゃんが出てくるが、なんと東大医学部卒のお医者さんとのこと。

東大卒のお医者さんが書く自然治癒力に関する1冊、非常に興味深いところである……。

 胡散臭さを感じつつ、本書の発掘を試みることに決めた。

 

 

 

2. 書評

2.1 本書の概要

西洋医療でカバーしきれない病気を自然治癒で治してきた患者の事例を沢山見てきた著者が、自然治癒力を高めるためにはどうすればよいかを分かりやすく解説・伝授してくれる1冊である。

本書には前半部分に筆者が独自に作製したチェックシートが用意されており、その回答を元に自然治癒力の部分が弱いのか、その部分を良くするためにはどうすればよいかについてそれぞれの単元で解説されている。さながら問診票といったところだろうか。

 

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↑チェックシートには「ん?」となる質問もなくはないが、自然治癒力を高めるために広く柔軟な心で受け入れよう。

 

6つの単元としては、飲食・運動・気功・心・起居ふるまい・周囲とのつながりが挙げられている。

ちなみに私は気功が弱かった、なぜなら気功を普段全くやっていないので……。

 

本書は現代医学を超えた、まだ科学で十分に実証されていない分野に関する話が中心になるため、気功や人間の内なる気に関する話が多い。その中で西洋医学東洋医学の歴史、特に中国の気功にまつわる話は比較的詳しく記述されている。

そして、実際に気功によるトレーニングについては図解で解説されている。

 

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↑身体を良くするためのトレーニング方法について、死んだ目の成人男性や女性がわかりやすく教えてくれる。

 

その他食事に関する記述や周囲との環境に関する話に関しては、筆者の思想が少し強い気もするが一般的に健康な生活を送るためによく言われているようなことが書かれているだけなので特筆して取り上げる点はない。

 

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↑体質に合わせて特に取るべき食事などが本書には書かれている。その区分は中国の医学的な記述に基づいているらしい。

 

結局、当たり前と言われていることをしっかり意識して生活するのが大事だということだろう。

 

 

 

 

2.2 自然治癒力と気功とポテンシャルと

現代医学でも治せない病気を治す人体ならではの力、自然治癒力

その源泉となる部分の概念について、筆者はポテンシャルという言葉を非常に好んで使っている。物理学者が使っているポテンシャルに触発されていると筆者自身が明言しているが、もちろん物理学で一般に言われているようなポテンシャルの意味とは異なる。

 

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何やら色々ごちゃごちゃ言ってるが、結局のところ自然治癒力の源として何となくカッコいいからポテンシャルという言葉を使っているという風に考えて差し支えない。

本書を読む上では、ポテンシャルという言葉を勝手にエネルギーだとかパワーだとかそれっぽい言葉に置き換えて全く内容の理解に問題はない。物理学を学んでいない人でも身構えないで大丈夫である。

 

上記のポテンシャルを代表に、本書内の自然治癒力を高めるための理論や理由付けについてはどうしても希薄に感じてしまうのは否めない。

科学的な言葉を無理にねじ込んでいるように思える箇所が多いのと、読んでいて論理的にあれ?と思ってしまう箇所がちらほら見受けられるからだ。

 

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↑心理サポートがガンの経過に与える影響を示したデータ。本書内で実験の条件などは詳しく書かれていないが、確かに影響はありそうな気もする。

 

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エントロピーの観点からも頷けます←どういう意味???

 

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↑この記述に関しては典型的な相関関係のミスリードと言える。乳がんの患者のほとんどがトーストや目玉焼きを食べているのでなく日本人のほとんどが朝食にそれらを食べているだけだ。

 

 

色々述べてきたが、理由を深く考えなければ何となく気功のトレーニングとかはエクササイズとして効果がありそうな感じもするので普通に実践してみても良いと思う。

 

 

 

3. 総評

自然治癒力を高めるという部分の要となっている気功術や中国医学のベースの理論に関しては科学的なエビデンスが十分取れていないため、いかんともコメントし難い。

気功のトレーニングや食生活に関する記述に関しては、まあ栄養学とか気功の専門の本に書いてあるような内容をカバーしているような感じもあったのでまあ良いのではないかといったところである。

著者自身が医者であり、西洋医学ももちろんみっちり学んできたためか本書中に現代の医学を否定するような記述はない。

ポテンシャルだのベクトルだのエントロピーだの、横文字が特に意味もなく本文中に連発される以外はまあ医学関係の豆知識本の範疇としてそれなりに役に立つ部分もあると思われる。

 

気功や食事習慣などを通じての自然治癒力の向上を信じるか信じないかは別として、少なくともこれを読んだ読者が現代医学批判に走ることはないであろうという点で全然良心的な1冊であると言えるだろう。

ドクターペッパーを毎日平均で2本飲んでいる私だが、自然治癒力を高めるべくこの本に倣って平均1.5本までは落としたいと思う……。

 

 

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さて、次回はブックオフ珍書発掘隊も第20回を迎える。

毎週毎週楽しさ1/10、苦痛9/10くらいの割合でブログを執筆しているが節目にふさわしいインパクトのある1冊を発掘したいところである。

 

To Be Continued...