私はアイドルを見るのが趣味で、よくアイドルを見ています(自動翻訳みたいな書き出し)。
アイドルを見ていて、特に売り出し中のアイドルを見ていると、インタビューなどでよく、
「私たちのグループのメンバーは個性が豊かです」
といった旨の発言を聞く気がします。
この手の『個性』という言葉に聞く度、不意に違和感を覚えたりします。
その違和感を辿っていくと個性というものはいったい何だろうか?というところにいつも辿り着きます。
漫画やアニメ、映画やドラマ、様々な作品についてもそうです。個性豊かなという言葉は至る所に蔓延しています。きっと私自身も自覚していないところでこの個性という言葉を使っているのではないかと思います。
ここで個性という言葉の意味をさっと調べてみると、
1. 他の人とちがった、その人特有の性質・性格。個人の特性
2. 個体に特有の性質。
とのことです。
疑いようのない明確な定義だと思います。
ですが、個性が『豊か』だというのは一体どういうことなのでしょうか?
恐らく、よく言われている個性が豊かという言説は「個性をいくつかの評価軸でマッピングした場合、重なり合う部分が少ない」ということを表しているのではないかと思います。
つまり、熱血な人がいれば冷静な人がいる、恥ずかしがり屋もいれば目立ちたがりもいる、といった風に自身の持つ性質が同じグループ内の他メンバーと重なり合う部分が少ない時、これを『個性豊か』と言っているのではないかと思います。
ここまではまあ、分かります。
ではなぜ、私はアイドルが言ったりする『個性が豊か』というアピールに違和感を覚えるのか?
考えた結果、『個性豊かってアピールしてる割にそんな大したこと言ってないじゃん』と思ってしまうからだということに気付きました。
何かしらの番組で個性豊かです、という発言をしたアイドルに対してMCが「どういう子がいるんですか?」と訊くとします。
そしたら大体「ファッションセンスが派手な子」だとか「アニメが好きでオタクっぽい子」や「楽屋でめちゃくちゃうるさい子」とかそういう子が上がってきます。
確かにそのグループ内では個性が豊かだと言えるでしょう。一人一人異なる性質の子がいて、グループ内では見分けがつくでしょう。
ですが、もう少し外側の視点で見てみると、アイドル全体の集団の中でその個性とやらを考えたら掃いて捨てるほどいる個性であることが分かります。
つまり、そんな個性は各々のグループにいくらでもいるんです。個性豊かという要素は自グループ内の差別化には役に立っていても、もう少し一般化した広い範囲で見ると途端に没個性になってしまうのです。
よくネットなどでいじられている大学生の『キャラ濃い』『あいつはえぐい』という言葉に通じる部分があります。内輪の中ではそれは成り立っていても、外にいる人から見たらその前提は成り立たなくなってしまうのです。なぜなら外から見たらそんな人沢山いるからです。
つまるところ、「だから何???」という話です。
ですから、個性が豊かという言葉は基本的にはある集団を構成するメンバーを見分けるためにしか使えず、個性が豊かということそれ自体が他の集団と比較して優れていることを保証するわけではないのです。
掘り下げていく中で違和感が解消されてスッキリしました。『個性が豊か』『キャラが濃い』というアピールそのものがコモディティ化している現状を考えて、違った切り口のいいアピール方法があればよいのではないかと思いますが、それは中々難しそうですね……。
実際問題として、個々のメンバーの個性よりももっと大きなスケールでのグループの属性や方向性、そして目的が大事な気がします。これはアイドルに限らず、会社でもなんでも、ある分野に属する集団全てに共通することだと思います。
『個性が豊かです』というのはある意味ない袖を振っているのかもしれません。
グループとしての大きな差別化要素がないから、個々のメンバー単位での話にシフトしてしまうのかもしれません。
『個性が豊かです』なんて言葉を使わなくても、まずグループとしての目的があって、こういう活動をしていて、こういうメンバーがいて……と掘り下げていけば自然に個性と呼ばれる要素まで勝手に辿り着いているはずなのに。
「あなたたちのグループにはどんなメンバーがいるんですか?」と聞かれたときには、「個性が豊か」という言葉を使わずに「〇〇な子が多いです」とか「〇〇な子がいます」と言うだけで、だいぶ印象が違うと思います。
グループ内での個性のバラつきをアピールするよりも、グループ内に共通する要素を言ってみたり、特に強調したい個性を持った子一人を押した方が結果としてグループ全体の傾向が分かって印象に残りやすいからです。
限られた時間でアピールするときに使う「個性が豊か」という言葉は、伝えたい情報の取捨選択ができていない悪手だと思います。
雑誌などで数万字単位の長いインタビューを受けるときとかには使ってもいいのかもしれませんが、そんな取材を受けれるのはすでにポジションを確立できて売れているグループだけですからね……。
以上、『個性豊か』という言葉に対する違和感に関する話をこれで終わります。
長いだけで中身のない、個性のないブログでしたね。