孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

2024年6月に読み終わった本リスト

振り返ってみれば6月は仕事が火を噴き、私からも火を噴き、トータル会社でボヤ騒ぎが起こるレベルの労働状況でした。

 

 

基準:

  • 当該月に読み終わった本が対象(※読み始めたのがその月とは限らない)
  • 最初から最後まで目を通した本を『読み終わった』と定義

 

昨月の記事:

2arctan-1.hatenablog.com

 

目次:

 

 

崖っぷちだったアメリ任天堂を復活させた男

任天堂が好きなのもあり、書店で見かけて購入。プレステ2最盛期でソニーマイクロソフトに北米市場を圧倒されていた時代にNOA(任天堂アメリカ支社)に入社し、復活に貢献したレジー氏の1冊。

全体的な面白さとしては期待していたほどでもなかった。合間合間に入るビジネス的な教訓が鬱陶しい(ビジネス書に区分される本なのに身も蓋もないが)なと思った。任天堂に入ってからのエピソードに焦点当ててビジネス的な教訓は最後にふりかえってくれれば良かったのにと思った。

とはいえ、ニンテンドーDSWii、Switchの成功の裏で日本市場と北米市場の差を考えつつ岩田氏の判断に対して果敢に進言し続けたレジー氏の業績はすごいし、組織に入り込んだり改革を行うやり方も上手い人だなと思った。

想像よりだいぶ職業を転々としており(P&G→ピザハット→パンダエクスプレスの運営会社→アルコール販売会社→自転車販売ベンチャー→メディア大手会社)と、アメリカという国で転職を重ねながらキャリアを築いていく雰囲気を掴むことができる。(2章にギュッとここら辺の内容がまとめられているので一つ一つの話はそこまで詳しくないが)

 

 

 

ホメ渡部の「ホメる技術」7 ― 仕事・恋愛・人生を成功させる

古本市場で1冊80円で売られてて何となく買ってしまった。まず前提としてこの本は渡部が書いてるんじゃなくて、編集の人が渡部や児島に聞いて書いている。
1章は渡部にホメるコツをインタビューし、その後編者が渡部の回答を別のビジネス書などを引用し『的確』だと褒めている。褒め方を褒めるという二重構造となっていて仕組み的にはコントチックで面白い。
2章は渡部の褒め方を7つの法則に分解して、具体的なお願いランキングの収録の事例(番組台本?というか進行を文書化したもの)をたっぷり用意してそれに対して褒めワードに対して解説をする手法をとっている。
3章で改めて渡部の7つの法則と、相方の児島を上手く使ったキャラクターの対比、及びPNS診断に基づいた性格分析が行われている。変な折れ線グラフがたくさん出てきてめちゃくちゃデータが見づらいので注目。

ネタとしては面白いし、言ってることは正しい本。購入金額80円ならまあいいか(笑)って感じ。

 

 

 

SCSKのシゴト革命

これも同様に古本市場で1冊80円で売られてたもの。大手SIerのSCSKが大幅に労働環境、およびプロジェクト管理手法を改革することで超人気企業に登り詰めたよ!っていう話。ちなみにSCSKは元々中堅SIerだったSCS(住友情報システム)とCSKの2社が合併して2011年に生まれた会社。たぶん合併後の社名、秒で決まったんだろうな。

端的に言うとSE+という開発標準の徹底による品質向上・炎上防止と、人的リソースの最適配置を進めて結果として働き方が大きく改善された!という内容。正直、SCSKならではというような変わった取り組みは書かれておらず凡事徹底を貫いたという印象。合併直後で風土を変えやすかったという背景はあるんだろうけど、数千人規模の大企業で改革を進めるのには結局経営陣からの強力なトップダウンが必要なんだろうなということがわかる一冊だった。

 

 

学問の発見 改訂: 創造こそ最高の数学人生

有名な数学者の本で、いいという評判を聞いていたので読んでみた。研究を始めとする創造活動全般の面白さがひしひしと伝わってくる良い本だった。

筆者の来歴で15人兄弟の大家族で生まれ、勉強しようとすると実務家の父にそんなことより働けと言われていたあたりで現代との環境の大きな違いを感じた。筆者の勉強をすることは『知恵』を身につけることであり、創造することの楽しさを実体験をベースに説いており凄い学者さんの半生をベースにスッと読んでいけた。

大学院時代先輩に影響を受けて『不完全な論文を書くことには価値がない』と変にとがっていた時期に街中で手帳を拾った女の子に「おじさん」と呼ばれ、創造をできていない自分が果たしておじさんと呼ばれる価値があるのかと自問自答し悩みながら一本目の論文を書き上げるというエピソードがあるのだが、この部分がなぜだかすごく印象に残った。

ニーズよりも最終的には自分が何を求めているのかというウォントが大事という話に絡め、先行研究でも解決できなかった特異点解消の問題を解きたいという思いが解決につながったと説いている。世界中の名だたる研究者を具体名を出しながら否定されたエピソードを話しているが、さすがにそんな大御所陣から総否定されたら自分なら折れるだろうなと思った。

 

 

 

 

機械学習工学 (機械学習プロフェッショナルシリーズ)

2年前くらいに買って積んでたけど、こういうシステム開発にほど近いAI本はさすがに読まなきゃと読了。読み始めたら量は多いけど結構ほ〜となることが多くて面白かった。それぞれの分野の専門家が各章を担当しており、実務としての機械学習プロジェクトを掴むのに適した一冊だと思うし、実際この本の中で書いてあるような課題点などは実務で感じたことが多い。

開発・運用マネジメント、システム運用、デザインパターン、品質、判断根拠説明、倫理、知財・契約などが章トピックとして並んでいる。これらは従来のソフトウェア開発で重要となるポイントだが、機械学習特有の確率的な挙動やブラックボックス性の中でどうこれらについて検討していくかがポイント。多分まだまだ構築中の分野なんだろうな……という感想。

 

 

 

はじめてのUXデザイン図鑑【BOW BOOKS016】

図書館でザッと一読。UXとDXは切っても切り離せずDXされた製品だけ提供しても意図した通りの結果にはならない、と冒頭に書かれている。
UXデザインは映画やドラマの脚本作りに似ているらしい。マーケティングの際には対象ユーザーの幅を持たせるが、ペルソナや共感マップを作る時は特定の個人レベルまで絞り込む。価値マップでユーザーの結末を作る、シーンを多面的に想定する、それらをカスタムジャーニーマップであらすじに落とし込む、登場人物や小道具を配置するなどのメタファーでデザインの流れが説明されている。
図鑑が2章にあり、UXを活用した例が色々出てきている。てっきりサブスクのサービスとかばっかりかと思ったら『プロセス体験』で人事評価が出てきたり、あえて選ばないというサービスでお見合いが出てきたり……。
サービスをどう作るかの構成には役に立つだろうし、仕事とかでもこういうことを考えてやっていきたい。

 

 

 

わが投資術 市場は誰に微笑むか

色んなとこで話題になってるので、ワシもいっちょう読んだろうかいということで読了。

要するに社長がやる気ある割安な小型成長株を買え!という内容なのだが、筆者自身の強すぎるエピソードトークやシニカルな目線が効いていて、普通に株式市場についてプロフェッショナルではないにしても読み物としても面白かった。大型株はアナリストが張り付いていて勝ち目が薄い、コミュニティからの情報確保とリスクヘッジのために企業勤めは続けるべき、情報にはバイアスが常にかかっている、など言うていることは基本的に妥当だなとは思う。この筆者の語り口が上手すぎるので知らぬ間にバイアスに陥っているだけかもしれないが。