孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

ボカロで覚える中学理科 【ブックオフ珍書発掘隊 その12】

ブックオフ珍書発掘隊!!

 

 

今回紹介するのは第6回以来となる学習参考書である。

 

2arctan-1.hatenablog.com

 

と言っても、『珍書』として紹介する以上、普通の参考書の訳がない。

今回発掘したのは、楽曲ともに理科を学べる画期的(?)な1冊である。

 

 

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ボカロで覚える中学理科/MUSIC STUDY PROJECT

学研プラス

2016年4月19日発売

購入価格:210円(定価:1,600円+税)

 

 

珍書度:★★

内容のまとも度:★★★★

おすすめ度:★★★★

歌詞だけで理科の内容覚えるの流石にムリ度:★★★★★★★

 

 

本発掘録の目次:

 

 

1. なぜ本書を選んだか?

ブックオフの参考書コーナーには定番の参考書のみならず少し変わり種の学習参考書も多い。その中でも、CD付きで一際目を引くのが本書であり、ボーカロイドと中学理科のコラボレーションというアーティスティックさに少し惹かれてしまうところがあった。

と、同時に『そもそも中学理科なんか別に参考書の力なんか借りなくてもできるだろ……』という冷ややかな自分の心の声が呟いたのもまた事実。

 

当時の中学生の私はこんな参考書には絶対買わないだろう(硬派な教科書が好きだから院試の時にも絶対マセマシリーズを使わなかったし)が、それ故にこの本がどれくらい役に立つかが気になる。

 

収録されている歌の内容と合わせて、本書を発掘していこうと思う。

 

 

 

2. 書評

2.1 本書の概要

本書はボーカロイドの歌を聞くことによって、中学理科が勉強できるという画期的な内容の参考書である。どうやら他にも歴史や数学など、様々な科目で同様のシリーズを展開しているらしい。

中学で習う理科の主要単元10個について、それぞれボカロPが楽曲を提供している。ボカロにはあまり詳しくない私でも知っている『脳漿炸裂ガール』のれるりり氏などがキャストにいて、気合の入ったメンツだなと感じた。

 

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本書の各楽曲の紹介ページにはQRコードが付いており、アプリ『ARreader』を介して読み込むことによって各楽曲のMVが再生される。あるいは本書に添付されているCDを再生することによっても楽曲を聴くことができる。

 

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↑別にCDでも聴けるのだが、アプリのQRコードを読み込んでMVを再生するのも乙なものである。1度は味わってみてほしい。

 

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↑楽曲ごとにMVのテイストは違っていて、『このクリエイターはこういう目線でこの単元を捉えているんだな』と感じたりする。ヌルヌル動くアニメーションがないのは残念(作るの大変だから当たり前だが)。

 

 

そして各楽曲の歌詞ページ、歌詞に出てくる重要単語のチェック、そしてその単元の重要ポイント をまとめた解説、最後に歌詞の穴埋めクイズというスッキリした構成になっている。

 

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↑歌詞の穴埋めクイズ。何回も曲聴いてたら意味わかってなくてもわかるし、まあないよりはマシ程度か。

 

何度も何度も繰り返し聴き、解説を読んでいるうちに自然と理科の知識が定着することを目指した内容になっている。

 

 

2.2 楽曲のクオリティは凄いが、さすがに10曲では……

本楽曲は10曲と、広範な中学理科の範囲をカバーするには少し物足りない数ではあるが、さすがになかなかの楽曲が揃っている印象である。ボカロを普段聴かないので余計にそう感じたのかもしれないが、全体的にテンポが良く音域が広くて聴いていて明るくなる曲が多い。

いかにも厨二っぽい曲調の『染まるセカイの物語』『厨二理科ボーイ』、独特の中毒性のある『アトミック恋心』などボカロっぽくて面白い曲が沢山ある。ざっと聴いた中では個人的にはアトミック恋心が割とお気に入りである(歌詞の内容は加味せずに曲として)。

勉強嫌いの中学生でも、ボカロが好きなら本書の曲はしっかり聴き込むことだろう。

 

しかしながら、内容としては学習のきっかけにはなるかもしれないが理科の知識の定着に用いる上では弱いのではないかと考えられる。

 

というのも、結局限られた数分の曲の歌詞では各単元の重要フレーズのほんの一部しか出てこないし、結局キチンと歌詞の意味を理解するためには解説部分を読み込まなければならないからだ。

解説部分はシンプルにまとまっていて読みやすいが、いささか単調でつまらない。本書を対象とする読者層は何回も繰り返し曲を聴くうちに本を読むのを辞めて曲だけ聴くようになると思われる。

とはいっても、曲の中にもある程度理科の基本概念は含まれているためその習慣がついたのなら本書の目論見としては成功と言えるだろう。

東進の人気英語講師である渡辺勝彦氏に『好き嫌いなんていい加減なもんなんだ。情報量が多くなってくると手のひらを返したように「俺英語好きだわ!」って言うやつが沢山いる』といった言葉がある。理科が嫌いであっても、本書をきっかけに少しでも知識が増えて問題がわかるようになったならそれが好きのきっかけになるかもしれない。そう考えると、私は本書の果たしうる潜在的な役割には値打ちがあると思う。

 

なお、本書に収録されている楽曲の一部はクリエイターさんがyoutubeなどで公開しているため気になった方は検索して実際に視聴してみると良い。

 

 

 

3. 総評

ボーカロイドの楽曲は多種多様であり、10曲もあればお気に入りの1曲が見つかること間違いなしである。

 内容としてはやはり楽曲で理科の知識をすべてカバーするのは限界があり、歌詞には耳障りがいい単語ばっかり持ってきてきている感は否めない。きちんと理科の知識を定着させるには、各楽曲の紹介ページの後半にある解説部分をしっかり読む必要があるだろう。

とはいえ、勉強嫌いの中学生にとっては、よいきっかけのひとつになるのではないだろうか?

そうでなくても、聴いてる分にはなかなかクオリティの高い曲が揃っていてボーカロイドが好きなら買って損はない一冊とは言える。参考書としてのお役立ち度は微妙だが、シンプルな楽曲アルバムとしてならそこそこの一冊だと思われる。

 

 

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さて、来週は超有名事務所にまつわる珍妙な一冊を発見したので、それを取り上げる予定である。

現在も色々な面で世間を騒がせ続け、女性を魅了し続ける一大事務所、その実態については知らないことが多いので楽しみに発掘していきたいと思う。

 

 

To Be Continued...

 

 

 

 

おまけ

中学理科の範囲をカバーできる楽曲には実は今回紹介したボーカロイド曲以外にも存在している。

一応理系で大学院卒の身として、理科にまつわるオススメの楽曲として以下の二曲を紹介して今回のブログを締めたいと思う。

 

【スイヘイリーベ ~魔法の呪文~/かっきー&アッシュポテト】

 

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NHKでやっていた教育アニメ『エレメントハンター』のEDテーマであり、名前の通り元素周期表を覚えるための語呂あわせの歌だ。軽快なリズムでつい口ずさみたくなる中毒性があり、この曲を聴いているうちに高校化学で必要な元素については間違いなく覚えられるだろう。

およそ4分で全元素をなんとカバーしており、聞き込むことによって全元素を暗記することも可能という実用性である。

かくいう私もこの曲のおかげで第4周期以降の元素の順番を覚えることができた。受験時にはカルシウムまでの元素の順番を覚えていれば大体事足りるのだが、やはり第4周期以降も覚えていると特定の問題が圧倒的に楽に解けるのも事実である。

理系の全高校生に聴いてもらいたいもらいたい名曲だ(アニメのエレメントハンター自体は面白くないし主人公の声優がめちゃくちゃへたくそだが)。

 

【全力大実験!/ロッカジャポニカ

 

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今はもう解散してしまったアイドルグループ『ロッカジャポニカ』の理科曲である。

ロッカジャポニカは一時期学校で習う各教科の楽曲を出すというなかなか面白い試みを行っていて、本曲はそのうちの理科に相当する内容の曲である。

そして、『教材』という観点からロッカジャポニカの教科曲を見つめた時に一番出来がいいのがこの全力大実験!であろう。

中学理科相当の範囲の物理・化学・生物・地学が繋ぎ目なく滑らかに接続した理科の視座から見る世界を描写した歌詞は必見である。理科の中の各科目は実は繋がっていて、そして密接に関わっているということをこの曲は教えてくれる。

中学生の時にこの曲を聴きたかった、そう思える一曲だ。

 

 

以上、理科にまつわる2曲を紹介した。

 

……『理科にまつわる』2曲って、なんだよ????????????