孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

【2021年】読んで面白かった本トップ10

昨年度のまとめがこちら。

 

2arctan-1.hatenablog.com

 

1月ももう終わってしまいますが……。

2021年も合間合間の時間にちまちまと色々な本を読んでいました。

 

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昨年読んだ本はトータルで117冊となりました。

転職の兼ね合いで1ヶ月ほど無職期間があった3月やお盆連休のあった8月などは他にすることもあんまりなかったので、かなりの冊数を読んでいますね。

2020年と比較して2021年は当たりの本が多く、是非皆様に紹介したい物が沢山ありましたので10冊紹介させていただきます。

 

 

目次:

 

深層学習の原理に迫る 数学の挑戦

 

2021年読んだ本のナンバーワン候補の一角です!2021年に発売された新しい内容の書籍です。

巷で溢れているディープラーニング系の一般書の一つであることは間違いないのですが、著者が深層学習の数学的な原理の研究者で、その内容(を極限まで我々一般人がイメージしやすく面白いと思えるように)が話のメインになっています。ビジネス応用や事例紹介に焦点を当てられ『原理』はわからないものとされがちなAI本とは一線を画す内容です。ブラックボックスといえるほど複雑な多層ニューラルネットワーク「なぜうまく学習できるのか」に説明が与えられる様が読んでいてとても面白かったです。

「深層学習の原理」というまだまだ分からないことが多い研究分野ですが、今後の進展も含めて興味深い一冊です。

 

 

ファミコンの驚くべき発想力 -限界を突破する技術に学べ

 

こちらも非常に面白い一冊です。

ファミコンの技術的な原理と工夫について解説するというユニークな一冊です。ファミコンが『すごい』ということはゲーマーを始め誰もが認めるところだと思いますが、この本を読めば具体的にどこがすごいのか、ハードやプログラムなどの開発・設計の観点から実感できて非常に興味深いです。本書で紹介されている工夫としてたとえば下記のような実装例があります。

  • 画面表示限界以上のキャラクターを水平に並べると消えてしまうので、高速で消えては表しを繰り返す。
  • 本体を安くするために本体側のメモリを可能な限り少なくして、ソフト側にメモリを積む。
  • 複雑な計算はテーブルにまとめておくか、なるべく使わない。
  • 乱数をうまく使ってステージを生成することで、ステージデータを保持せずにメモリ節約

挙げたのは本書の内容のほんの上澄みであり、より深い内容は本書に書かれているのでぜひ読んでみてほしいです。

 

 

思考する機械コンピュータ

 

コンピュータ関連の一般書としてかなり有名な一冊です。論理回路から始まり、状態遷移、プログラミング、チューリングマシンアルゴリズム、メモリなどコンピュータを理解するうえで必須のトピックが文庫サイズでコンパクトにまとめられていて良いです。状態遷移図の話はコンピュータ関連の一般書では割と省かれがちで面白いので特にお勧めです。

 

 

トポロジカル物質とは何か 最新・物質科学入門

 

昨今巷で話題(?)のトポロジカル物質について書かれた一冊です。大きく三部構成になっており、一部と二部は固体物性の基本や物性の実験結果を読み解くうえで必須の手法などに関する解説で物性物理学関連のトピックがかなりわかりやすく書かれています。大学で物理が授業科目にある人ならこの部分を読むだけでも本書を買う価値はあると思います。

三部が本筋となるトポロジカル物質関連の話で、第一部・第二部をいかに理解できているかの話になってきますので適宜振り返りながら進めていくことになると思いますが、一般書では聞いたことのないような話のオンパレードで非常に面白いです。

 

 

すべて僕に任せてくださいー東工大モーレツ天才助教授の悲劇

 

タイトルの通りで東工大に実在した助教授の白川浩氏の半生がノンフィクション小説のような形で綴られていて、読みごたえがありながらもサクサク読めます。アカデミアのどろどろとした内情が半実名でかなり生々しい描写で描かれてて、もはや面白いを通り越して「これもう特定できるけど大丈夫なのか……?」と不安になるほどです。

本書の主人公である白川氏は非常に優秀で様々な業績が語られていますが、今彼の名前で検索してもほとんどめぼしい研究成果は出てきません。アカデミアの盛者必衰を感じさせて切ないです……。

 

キヤノン特許部隊

 

かの有名なキヤノンの特許部門の功労者である丸島儀一氏が特許関連のエピソードや戦略について語った本です。インタビュアーと丸島氏との対話形式になっていてかなり読みやすいです。

今会社の仕事の関係で特許関連のお話をある程度理解しなくてはならなくなったので、「相手の弱みを調べて1割程度しか勝てるところがなくてもクロスライセンスに持ち込む」などの丸島氏の攻める特許戦略は目から鱗でした。別段特許に興味がなくても、「キヤノンスゲー!」ってなるエピソード満載なのでお勧めです。

 

 

一発屋芸人列伝

 

「ルネッサ~ンス!!」で一世を風靡した髭男爵山田ルイ53世一発屋芸人たちに取材を行い、その来歴や人となりを記した企画からして面白くなること間違いなしの一冊です。

本書を通じて、一発屋と呼ばれている人たちが実際ヒットするまでの来歴や今現在はどうしているのか、などがよくわかります。ヒットする芸ができた理由も火が付いた理由も様々で、さらに現在何をしているかも十人十色であり、とても『一発屋』で一括りでまとめることができません。山田ルイ53世の皮肉を交えつつも相手へのリスペクトも忘れない文章が読んでいて心地よいです。

 

 

黒いマヨネーズ

 

ブラックマヨネーズ吉田敬のエッセイを集めた本です。

吉田の卑屈で毒々しいが、どこか哀愁の漂うぼやきのようなエッセイは節々から人間臭さがあふれ出しています。吉田が漫才や平場のトークで披露しているような毒のある、それでいて妙に理にかなっているようにも思える視点の持論が文章になっても存分に発揮されています。吉田という人間の存在と比類なさを感じられる一冊だと思います。

 

 

飛田で生きる

 

かの有名な飛田新地で10年間店の経営およびスカウトをしていた著者による飛田新地の内情を描いた一冊です。飛田の運営の仕組みやどうやって女の子をスカウトするか、店の維持費はどのくらいかかるのかなど経営側の視点で語られていて、ライターの取材に基づいたルポなどとはまた違った味があります。後はサラリーマンをリストラされ親の保険金を元手に飛田のオーナーに転身したという著者自身のエピソードそのものも強烈です。

続編もありますが、そちらは飛田で働いていた女性同士のエピソードをメインに扱ったものになっています。

 

 

日本の風俗嬢

 

昨年紹介した『ルポ中年童貞』と同じ著者で、風俗業界の実態をありありと書き出した一冊です。漫然と風俗業界はきついけど稼げる職業というイメージがありましたが、本書で出てくるデータや話を見るとごく一握り以外は風俗嬢も経営者もスカウトも全然儲からない世知辛い世界だな……と何とも言えない気持ちになります。アンタッチャブルな業界の話ですが、非常によくまとまっていて面白いです。

 

 

 

 

 

10冊の選書を見ると、自分の興味どのようなところにあるのかわかる気がします。

今年も引き続き積読を崩しつつ新書も買って読んでいくような毎日を過ごしていきたいと思います。

 

それでは、また来年!