孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

2024年4月に読み終わった本リスト

あれ、もう6月が終わる……???

4月の本の感想をまとめていたら、6月が終わる……???

 

 

基準:

  • 当該月に読み終わった本が対象(※読み始めたのがその月とは限らない)
  • 最初から最後まで目を通した本を『読み終わった』と定義

 

昨月の記事:

2arctan-1.hatenablog.com

 

目次:

 

 

 

嘆くな、ぼやくな大学生

Amazonの古本が現在売り切れのためいい感じにリンク貼れなかった……。読んだよ~という証に写真も貼ります。

帝人株式会社人事部が主導となって就活生を元気づけるために作られた1冊。帝人内の様々な部署で様々な仕事に携わる人たちのありがたいお言葉が顔・名前・所属部署・出身大学までついて公開されておりプライバシーがひとつもなくて面白い。社会人風を吹かせてイキってる人、若者の特徴について話す人、自身の苦労談を書き綴る人など様々。今の時代なら絶対出なさそうな本だが、それはそれとしてワイワイ賑やかにやってそうな会社でシンプルに楽しそうだとは思った。

 

https://www.amazon.co.jp/%E5%98%86%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%80%81%E3%81%BC%E3%82%84%E3%81%8F%E3%81%AA%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E7%94%9F-%E5%B8%9D%E4%BA%BA%E6%A0%AA%E5%BC%8F%E4%BC%9A%E7%A4%BE/dp/4906468004

 

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星空をつくる機械 プラネタリウム100年史

図書館で見かけて、プラネタリウムの歴史というニッチさに惹かれて手に取ってみた。

一般書の容貌をしているが、めちゃくちゃ事細かに近代プラネタリウムの歴史や系譜、品番やその特徴について書かれており普通に専門書の領域に踏み込んでいると思う。明らかに初心者や子供が読むには詳しすぎであり軽い気持ちで読むと情報量が多くて読むのがしんどくなる。

1,2章はプラネタリウムの前身とも言える天球儀と天体運行儀の歴史が語られており、世界史感が強い。3章では1923年度にドイツ博物館で光源を使い投影する近代プラネタリウム『ツァイスⅠ型』がツァイス社によって開発されるまでのエピソードが詳細に書かれ、以降はそして近代プラネタリウムの台頭(ドイツから米国、そして日本へ)や日本国内でのプラネタリウム普及、コニカミノルタ/五藤光学研究所/大平技研の国産プラネタリウム開発エピソードなどの話。筆者自身が天文博物館館長ということもあってか国内の普及まで含めた歴史的な経緯がめちゃくちゃ厚くカバーされている。

この一冊を見ればプラネタリウムというものが、非常に長い歴史と高い技術を兼ね備えた逸品であることはわかるだろう。

 

 

 

相撲めしーおすもうさんは食道楽ー (扶桑社BOOKS)

元力士という移植の経歴を持つ漫画家である筆者が、お相撲さんのおすすめするグルメや思い出のご飯などについて取材してまとめた1冊。漫画部分が3割、取材などの文章が6割で、残り1割は実際の相撲部屋に突入して出てきたちゃんこの紹介である。

自分自身ももちろんお相撲さんには程遠いが結構食べる方だし、ボリューム満点かつ美味なお店情報や知られざる相撲部屋のグルメ事情などが読めてよかった。この本に書いてあった大阪のホルモン鍋の店この間(※5月末くらいなのでこの本読んでから一か月後くらい)行ったけどめちゃくちゃおいしかった。

 

 

 

タクシ-運転手は大学院生in京都

筆者の経歴が異色過ぎて購入。

筆者は一浪して大阪芸大の環境計画学科を卒業→百貨店内定も社会科教員になりたくて立命館大学経済学部に入り直し卒業→教員試験に落ちて静岡の自動車学校に就職→愛知の地図出版会社に転職→教育学者になるべく立命館大学大学院に入り直すという、紆余曲折の中でもトップクラスに見たことない込み入った経歴をしている。

交通地理関係の研究を行っており、また資金を援助してくれた祖父が亡くなったのもあり京都のタクシー会社でおよそ一年働いた際の日記が綴られている。タクシー会社における勤務体制や、タクシー会社の同期のおじさんたちとの朗らかな話や、気前のいい客やめんどくさい客など普通にすいすい読める。終章では執筆時点でのタクシー業界の現況の考察がまとめられ、広島大学院の博士課程へ進学するところで本書は完了している。

そして調べてみたところ、どうやら筆者はこの後バス運転手もやっていたようだ。小説家になろうに未完結だが続編が書かれている……!

 

https://ncode.syosetu.com/n4336go/

 

 

 

希望の格闘技

ヒクソン・グレイシーと闘い、日本ブラジリアン柔術協会会長も務めた中井祐樹氏の半生や学んだことなど。

レスリング→柔道→総合格闘技柔術で、世界的に活動された筆者のエピソードが面白く、『MMAは総合的な組み合わせでありすべての点でベストな師はおらず各々がベストと思うことを伝えることが大事』『練習は究極的には課題克服のために行う』など色々とモチベーションが上がることが書かれている。

三章は対談で筆者の大学の先輩のライターの増田俊也氏と話しているが、増田氏が筆者の三倍くらい喋ってて筆者は聞き役に徹していてこういうので分筆業の人が話し手でアスリート側が聞き手に回ることあるんかとなり面白かった。

 

 

 

世界史の構造的理解 現代の「見えない皇帝」と日本の武器

「物理数学の直観的方法」でお馴染みの長沼伸一郎氏の新作(言うほどめっちゃ新しくはないけど)で、kindleunlimitedで無料公開されており、読ませてもらった。

長沼氏の持ち味は何と言っても複雑な数式や要因の絡み合った学問を明快な形で簡潔に説明する気持ちよさ……なのだが、本書の題材である世界史だとさすがに単純化しすぎて無理があるのでは?と感じた。物理数学、経済数学、経済学などと比べて人間が一つの要素として動く世界史に関しては、『結論』となる主張ありきで動かないとまとまらないところがあり、歴史の都合のいい部分や現在の各国動向を筆者の脳内の結論に無理やり紐づけている感は否めない。この点は冒頭に歴史家E.H.カーによる「歴史とは過去と現在の対話である」という引用と、どういう未来を描くかによってストーリーが定まるという主張から筆者も重々承知の上だと思う。

本書の概要をサッと書くと政治で重要なポイントは民衆の短期的欲望を抑制し長期的な願望を成就することであるが、SNSなどの台頭で人々の欲望を抑えることは難しいらしい。西洋は部分和は全体の総和に一致する思想が根底にあり、日本はそこを突くしかない……というもの。西洋VS東洋思想の構図が私が学生の時から止まっている気がして、「そんなこととっくに米国は気づいているのでは……?」と思わなくもないが、まあそんなものかという印象。

とはいえ現在は昔と比べて学ぶべきことが多すぎて社会を変えるような成果を成し遂げるには1.5倍程度の年齢がかかると思っておいた方がいいという『歴史換算年齢』理論はなるほどと思ったし、日本はイスラム文明と組めば相補的に強みを伸ばして中国に対抗できるというあまり聞いたことのない主張がされてて面白いので気になったら読んでみてもいいと思う。