孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

納得させる話力 【ブックオフ珍書発掘隊 その11】

ブックオフ珍書発掘隊!!

 

 

連休も終盤、みなさんいかがお過ごしでしょうか?

前回、前々回とキャラクター的にも内容的にも濃い珍書を取り上げてきたので、今回はあっさり目の文庫本を発掘していきたいと思う。

長い連休を持て余している方々には、気軽な気持ちで箸休めのつもりで見てほしい。

 

 

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納得させる話力/著: 土田晃之

双葉文庫

2017年3月16日発売

購入価格: 110円(定価:565円+税)

 

 

珍書度: ★

内容のまとも度:★★★

おすすめ度:★★

中身の充実度:★

土田のポジショニング度:★★★★★★★

 

 

本発掘録の目次:

 

 

 

1. なぜ本書を選んだか?

 勝俣州和、ファン0人説』などといった企画が水曜日のダウンタウンで出されてしまうように、芸能界にはテレビによく出ているけどファン居るのか?みたいなタレントや芸人などが一定数存在する。よくテレビに出ていて、いつもひな壇に座っていて、でもよくよく考えてみたらファンいるの?みたいなポジションの芸能人である。

個人的には土田晃之という芸人は、かなりその立ち位置の代表だと思っている。

目立って嫌われているわけでもないし、ガンダム芸人とか家電芸人とか見てる感じそれなりに弁の立つ人なんだろうな~とは思うがファンを実際に見たことがない芸能人の一人である(もちろんファン0人ではないと思うが)。

 

とはいえテレビの仕事が沢山あって、売れっ子であることには間違いない彼が本書の表紙でいつものしれっとした顔で腕組みしてる姿を見て、「逆に手に取ってみたくなった」というのが動機である。彼がテレビでよく逆張り発言をしているように、私もまたスカして敢えてこういう本を選んでみたくなるのだろう。

 

 

 

 2. 書評

 2.1 本書の概要

本書はQ&A方式で土田が読者からのお悩みにズバズバ答えていく形式になっている。

本書内での土田の立ち位置は巧みなトークでテレビに出続ける一流の芸人といったところだろうか。

彼のトーク術はビジネスにも役に立つ!という触れ込みで基本的に仕事や家庭な関するお悩み相談の内容が多い。対象がかなり明確にビジネスマンに絞られているといった印象だ。

 

お悩み相談の内容に応じて章分けがされているが、その内容はトーク、交渉、プレゼン、コミュニケーション、人付き合い、モチベーションといずれも仕事に関連した内容となっている。さらに巻末には土田晃之の話術の実践例が設けられている。

本書を読めば、人よりもうまい、有利な立ち位置に立つ術を身につけることができるだろう!

……保証はしないが。

 

2.2 土田晃之のポジショニング技術

本書を通じて、土田晃之トーク力というか、『優位なポジションに立つ』能力は相当なものであることが伝わってくる。

 

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まず最初の断りの時点で、「参考にする部分だけすればいい」という立ち位置を明確にしている。

こうすることで、ハードルを適切に下げて尚且つ自身のスタンスを提示している。

 

俺の言ってることを信じるも信じないも皆さん次第ですよ。俺ならこんな本は信じないけどね。

 

という冷めた視点での語り掛けである。

……冷静に考えたらずるい気がしなくもないが、気軽に読みやすくなることもまた事実である。

 

本書の全6章のうち、特に土田晃之の本ならではという要素が詰まっているのは前半部分に集約されている。

特に第1章のトーク術や第2章の交渉術の土田の回答から、彼のポジショニングのエッセンスを感じることができる。

 

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  • 狭い分野について深く話して、『全部を知っている』かのように錯覚させる……。
  • 自分の得意分野に上手く話をすりかえる……。
  • 敢えて1番手の話はせず、2番手3番手の話をする……。

 

などなど、土田晃之の博識で説得力のある感じを出すテクニックはここら辺に集約されていると思う。

 

そしてこのようなテクニックは本書中でも随所に使われている。

本書にはやたらエピソードトークとして上島竜兵が出てくる。彼はダメな人の例としてめちゃくちゃ使いやすく、また親交が深いのでいわば「得意」な領域なのだろう。さらに、土田的に答えにくい質問はしれっとたとえ話からオモシロ方面へと話題をすり替えて、結論で少しボケた感じにして茶を濁している。

 

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↑相談内容に対して、自身の経験から話をすり替えてちょっとボケた感じの回答をしているケースも多い。 

 

本書の後半部分に関しては、このような前半部分のテクニックを応用した回答かあるいは当たり前のような回答が多くあまり目新しさはない。前半で出た土田の話術を実際に追体験するような形になるだろう。

そしてそもそもの文量の少なさも手伝って、そのまま最後まで「ふーん」と思いながら読み終えてしまえるだろう。こうしてまんまと読者は土田晃之の筋書き通りに本書を読み終えるのである。

 

巻末のおまけ例文は土田晃之ファン(0人)は必見である。

これを参考にすれば、誰でも土田晃之っぽいトークができるようになるだろう(だからといって、土田のように対人関係の中で優位なポジションに立てるようになるわけではないが)。

 

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3. 総評

本書を通じて、特に何か特別なものが得られるとか、そういったことはない。まともに答えている相談の結論はシンプルで当たり前に思えるものが多く、それ故に反論する余地もあまりない。

ただ、何となく本書を読んでいるといつの間にやら土田晃之の巧みな誘導にハマって、なんだか納得した気になってしまうのだ。これこそがまさに本書で語っている土田が身につけたスキルであり、彼が芸能界で生き残るために身につけた強力な武器だろう。

 

そういうしたたかさを養うためには本書を読むことには意味があるかもしれない。だが、土田のポジションじゃないと許されないことも結構あったりするので、実際役に立つかははなはだ微妙なところでもある。

 

本ブログが恐らく私の人生で最初で最後の、土田晃之に関する長文感想になるだろう。そして今後テレビで彼が出ていても、トーク内容を意図して聞いたりすることはないと思う。

なぜならそこまでの関心は別にないから。

 

 

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To Be Continued...