孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

大学学部〜修士課程で出会った本の中からガチで選んだオススメ本5選

学部3年生の夏に「タダだし本でも借りるか」とふと思い立って大学図書館の長期貸出で色々な本を借りて読み出して以来、大学院の博士前期課程(修士課程)を修了するまでの4年間にわたって、色々な本を読んできました。

ジャンルとしては基本的にはサイエンス関係の本を中心にメインに読み、それ以外には古典的名作と呼ばれる様々な偉人の著書や他にも歴史書やらたまに小説なんかも読んできました。キャリア関係の本なんかも何冊か読みましたが、イマイチ参考になるようなものには出会えなかった気がします。ともあれ、様々なジャンルの本をとにかく色々読みまくりました。

私が大学時代に出会った本の中で、『この本は全員にオススメできる!』と思った超オススメの本を5冊紹介したいと思います。専門知識や前提を必要としない、人生の考え方に少しは影響を与えるような本をチョイスしています。

 

【大気を変える錬金術

 

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初めに紹介するのは私が大学時代に出会った本で一番良かったと思える一冊で、このブログを見た人全員に読んで欲しい1番オススメの一冊です。

本書は、化学を履修した高校生なら必ず知っていると言っても過言ではないアンモニアの合成法であるハーバー・ボッシュ法を生み出したフリッツ・ハーバーカール・ボッシュを中心としたドイツの科学者・企業人たちの伝記であり物語でもあり、その功罪を映し出した本です。

本書は大きくわけて、3部に別れています。

人口増加に伴い作物の肥料となる窒素が不足して食糧危機を迎えるだろうというクルックスの宣言を皮切りに、数少ない硝石が豊富に眠る南米での採掘や戦争の歴史が語られる第1部、ハーバーとボッシュによるアンモニアの大量生成法の確立と工場の建設、企業間の競争などが描かれた第2部、ノーベル賞の受賞など華やかな成功を収めた彼らが2回に渡る世界大戦の中で国と結託して戦争に加担しその渦中で苦悩し消耗し、そしてその生涯を終えるまでの第3部です。

ハーバー・ボッシュ法は世界を食糧危機から救った革命的な手法でありその一面を見ればハーバーとボッシュは世紀の英雄です。一方でその後ハーバーは毒ガス兵器の製造に手を染め、ボッシュアンモニアの合成法を火薬原料の製造に転用しました。彼らは多くの人の命を救った一方で、多くの人の命を奪うことにも加担したのです。本書では科学者としての彼らの功績を手放しに讃えるものではなく、その人となりや功罪、科学と戦争の歴史、レイシズムなどの時代の背景をありありと記述しています。その中に綺麗事だけでは済まされない魅力があり、心を動かされます。19世紀末から20世紀にかけての動乱の化学の世紀に確かに存在した重厚なドラマを、ぜひ一度感じてみてほしいです。

 

 

 

 【横井軍平ゲーム館】

 

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本書は任天堂の黎明期を支えた偉大な開発者である横井軍平氏の作品に関するエピソードや人となりを、インタビューの内容を基に炙り出した一冊となっています。

大手電機メーカーに落ちまくり、当時花札メーカーだった任天堂に保守点検業務の担当として入社した横井軍平氏は、業務時間中に暇を持て余しておもちゃを作って遊んでいたところを山内社長に見つかってしまいます。山内社長は横井氏を呼び出し、「このおもちゃを商品にしろ」と要求します。これが横井軍平氏最初の作品である『ウルトラハンド』の誕生につながり、任天堂花札メーカーから玩具メーカーへの本格的な転換の始まりに繋がっていくのでした……。

本書を通して 浮かび上がってくるのは横井軍平氏の類まれなる陽キャっぷりと哲学である『枯れた技術の水平思考』です。横井軍平氏は社交ダンス、ピアノ、スキューバダイビングと多趣味で外向的で女性にモテまくる陽キャでした。横井軍平氏はそのようなバックボーンから実に上手くプロデューサーとして技術者たちを指揮してきたことがわかります。そして彼は開発の際に最新技術に固執するのではなく、古くなった技術の見方を変えて新しく使うことによって低コストで今まで世の中になかった革新的な玩具を次々生み出してきました。横井軍平氏はこの本の刊行の翌年に不慮の事故で亡くなってしまっているのですが、彼が今生きて現代のゲームを見ていたらどんなことを思うのか、ついつい思いを馳せてしまいます。

 

【プログラムはなぜ動くのか?】

 

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普段我々は何の気なしにパソコンを使っています。検索したり動画を見たりメールチェックしたりゲームしたり……本当に色々なことがパソコンでできます。しかしながら、そのパソコンがどうやって動いてるかはほとんどの人にとってはわからないと思います。プログラムのコードによって動かしているんだと漠然とした理解はあっても、それは日常の感覚からは隔離していていまいち実感が掴めないのではないかと思います(僕はそうでした)。

この本は、そのプログラミング言語によって生み出される様々な機能と理解のギャップを埋めるのに役に立つ本です。パソコンがなぜ2進数で動いていて、プログラムを実行するという時にはどういうプロセスがなされているか、メモリーとは?プロセッサとは?などの疑問に解説してくれる1冊です。情報系の専攻でなかった私にとっては目からウロコでした。文系の人にもかなりこれは役に立つのではないかと思います。もっと言えば、内容的に基本情報処理技術者試験の対策とかにも役に立つのではないかと思います(余談です私は基本情報処理技術者試験の受験料払って当日寝ブッチしたことがあり、未だに持ってません)。

 

【今日の芸術】

 

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太陽の塔などで有名な芸術家である岡本太郎氏の著書です。この本が刊行されたのはもはや半世紀以上前になります。

本著の中で岡本太郎氏は『芸術』というものは古いモノの否定であり八方塞がりの状況の中、もがいてもがいて苦心の末生まれる新しい創造だと述べています。そして一般的に混同されがちである『美しい』と『きれい』の違い、『芸術』と『芸ごと』の違いなどについて非常に熱を持って書かれています。さらに、日本人の風潮、世の風潮に対しても激しく異を唱えています。作品だけじゃなく文章も非常にエネルギッシュな人であることが読めばわかるでしょう。

この本で書かれている芸術のあり方は、芸術に従事しない人にこそ胸が痛くなるくらい刺さるのではないでしょうか。なかなかキツい言葉が平然と語られてて、何か言い返したいのに何も出てこない。自分のあり方を読んでいて考えさせられてしまう。そんな一冊です。この本が出た当時は今よりももっと日本が閉鎖的で保守的だったのだと思いますが、岡本太郎氏の批判は今現在の日本にもなお通用してしまいます。これについては彼が生きていたら怒るのではないでしょうか。

 

 

【人生とはあるあるである】

 

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『逆境』あるある……人間を成長させがち。

 

最後に変わり種として、レイザーラモンRG氏の著書を紹介します。本書はRG氏のいわば自伝であり、自身の経験から得られたエッセンスが『あるある』という形で凝縮されています。要所要所で例えば「可能性あるある……試すことで自分を知りがち」など彼といった風に教訓のような形で様々なあるあるがエピソードと共に語られます。

ポジティブでハートが強いへこたれない、そして今や人気者になったレイザーラモンRG氏ですが、転校が続いて子供たちの当たり前が与えられなかったためコミュニケーションに苦労した子供時代や社会人の道を捨てて芸人の世界に飛び込むもなかなか芽が出なかった下積み時代などの経験談から、彼が非常に苦労して今を築き上げてきた人だということが実感できます。

相手を変えるよりも自分が変わる方が簡単、一般論を踏まえてちょっと深いあるあるを言うなど読んでみると予想以上に日常生活で役に立つ『あるある』が沢山詰まってることを実感するでしょう。

 

 

 

……以上、大学時代に出会った本の中からありとあらゆる人にオススメでにる5冊を紹介させて頂きました。

またもし機会があれば(というか暇があれば)、理系に役に立つ本の紹介などもしてみようと思います。ここまで読んでくださってありがとうございました!