ブックオフ珍書発掘隊!!
ブックオフ巡りの趣味が転じて始まった『ブックオフ珍書発掘隊』もいよいよ第10回の節目を迎えた。基本的にシリーズものが続いてこなかった当ブログでは初めての2桁の大台である。
さて、そんな記念すべき今回の珍書のテーマはズバリ『宗教』である。
今まで触れていそうで触れてこなかった新たなジャンルの珍書、いや神書の内容を紐解こうと思う……。
幸福の科学出版
1989年3月1日発売
購入価格:210円(定価1,000円+税)
珍書度:★★★★★★★★★★★★
内容のまとも度:★
おすすめ度:★★★★★
仏教とキリスト教混ぜ混ぜ度:★★★★★★★★★★★★
ぼくのかんがえたさいきょうのしゅうきょう度:★★★★★★★★★★★★★★★
本発掘録の目次:
1. なぜ本書を選んだか?
ブックオフの『宗教』コーナーは我々一般人が最も気軽に訪れることのできる魔境である。
様々な流派・規模・教えの宗教書が分け隔てなく並べられている。新しい宗教だと直接開祖が執筆した著書もあるし、仏教などを専門に研究する学者が書いた歴史書に近い本なども置いてある。
その中でも、やはり目を引くのは創価学会と幸福の科学にまつわる著書であろう。
共に相当な信者数が存在する、日本の中でもかなりの地位を誇る宗教だ。
特に今回取り上げる幸福の科学は相当な信者数もいる有名な宗教でありながら、ネットでは大川隆法の公開霊言などからトンデモ宗教と揶揄されたり面白おじさんがやっている宗教としてネタにされている印象が強い。
幸福の科学に関してのエピソードとしては、中学校時代に文房具屋で幸福の科学のおばはんからアニメ映画『仏陀再誕』のチケット3枚を押し付けられた経験がある。金払いがいいのかやたら出演声優が豪華だったので、声豚の同級生にチケットを譲ってあげた思い出がある。若者をアニメ映画で入信させるのが狙いだったのだろうか……。
信者が沢山いて、一方で嫌っている人も沢山いるような幸福の科学であるが、その内容については正直なところあまりよく分からない。仏陀再誕だの地球至高神エル・カンターレなど和洋折衷し過ぎていてどういうバックグラウンドなのか一切理解できない。
そして大川隆法は信じられない量の著書を執筆している。もし仮に幸福の科学の中身にちょっと興味がある人がいたとしても、ちょっとやそっとじゃ手を出せない。
そんな中で、このような幸福の科学そのものをざっくりと分かりやすく解説してくれた本は率直に言って興味がある。そしてこのブログを今読んでいる読者諸君もきっと同じ気持ちだと思う。
ある種のワクワク感を持って、新たな世界の扉へと飛び込みたいと思う。
もし戻ってこれなかったら、その時は察してほしい。
2. 書評
2.1 本書の概要
幸福の科学の開祖である大川隆法氏が一般の読者に向けて、幸福の科学の教えはどのようなものかを解説したいわば入門書のような位置づけである。
大川隆法氏の文章を読んだのは初めてだが、まさに説法のような語り口調で比較的平易で読みやすい印象を受けた。
本書の内容は学びの大切さをまず最初に説き、霊界の実態、その後幸福、愛、反省についての大切さについて語られる。その後、光明思想(ポジティブ思考みたいなものですね)、阿羅漢(求道者)への道、そして人生という問題集をどう説いていくかという比喩のような話で締められている。全8章仕立てで約200ページでコンパクトにまとまっている。
……一部おや?と思うトピックもあるが、概ね仏教系の流れを汲むような宗教書の印象を受ける。その中にキリスト教的な博愛の要素も加わっている印象だった。本書で語られている霊界の仕組み等については、次節で詳しく触れる。
↑本書の冒頭にある『人生の大学院』という言葉はかなり印象的。幸福の科学では学ぶという行為を重要視しているようだ。
余談であるが、大川隆法が霊能力に目覚めたのは昭和56年、そして本書が刊行されたのは平成元年なのだが、この時点で大川隆法は70冊以上の著作を出しているとの記述があってびっくりした。大川隆法、西尾維新や鎌池和馬よりもよっぽど速筆で笑ってしまう。
それだけ沢山の著書を『幸福の科学出版』という自分の会社から出版できるとは。宗教って、儲かるんだなと……。
2.2 物理学的な霊界の仕組み
幸福の科学の基本的な考え方として、まず死後の世界は存在するということが前提にある。
毎日霊界から通信を受け取っている大川隆法氏は多くの人に霊界の存在に気付いてほしいという熱いメッセージが込められている。
↑霊界の存在を熱く語る大川隆法。どことなく『トトロいたもん』感がある。
そして幸福の科学曰く、この霊界は物理学の次元構造に相当する四次元~九次元の世界に分かれているようだ。
四次元は、人が死後訪れる『幽界』。
五次元は、善人界とも呼ぶべき性根のいい人が行く狭義の『霊界』。
六次元は、神様に近い徳を積んだ人達の住む『神界』。
七次元は、人助けや愛の行為の実践を中心に生きている人々の集まる世界で仏教的に『菩薩界』と呼ばれている。
八次元は、『如来界』で世界的な教祖や大政治家など歴史を創ってきた人物が住む。
そして最上位の九次元は『太陽界』『宇宙界』などと呼ばれ、イエス、モーゼ、釈迦などが住んでいる。
所謂天国と地獄と呼ばれる概念も存在し、天国あるいは天上界は六次元の上層部に、地獄は四次元のさらに下層にある(それってもはやただの三次元なのでは?)。
下図のように積んだ徳に対して、階層的に霊界は成り立っているのである。
…………物理学的には一次元の階層構造じゃん、などと突っ込んでは絶対にいけない。
恐らくだが、空間的な三座標と時間に加えて、次元が増えるごとに何かしらの変数が加わっていくのであろう。
そして本書の中で大川隆法は六次元の神界の上層部に存在する『阿羅漢』を目指して徳を積んでゆくべきと主張している。阿羅漢は光の天使の予備軍であり、悟りにある程度近づいている人のことを言う。
死後の世界は確実に存在し、そして理路整然とした世界であると大川隆法は語っている。人間ははるか昔に神の意識が分かたれた霊体であり、死によって霊界へと帰っていくわけである。生前素晴らしい行いをした人間には死後さらに素晴らしい世界が待っている。
幸福の科学の教えは生と死を貫く幸福を得るための勉強手段である、らしい。
そしてこのような幸福の科学の教えを元に修練を積む人にとって、天上界(天国)に住まう阿羅漢は一つの関門である。この阿羅漢を一つの明確な目標として到達するためにどうすればよいか、それが幸福の科学の教えに繋がってくるというわけだ。
……霊界の概念は仏教やキリスト教の世界観がごった煮になっている感じで気にはなるが、何となく幸福の科学の世界観と目標が見えてきた。
次節では幸福の科学の教えの骨子を見ていきたいと思う。
2.3 幸福の科学の教えとは……?
幸福の科学の背景となる『霊界』の世界観が何となく掴めたところで、幸福の科学の教えに関する本書の解説を取り上げていこう。
前節でも少し書いたとおり、幸福の科学を学ぶことによって死後より素晴らしい世界で幸福に暮らすことが可能になると本書では記されている。
それでは幸福の科学で必要なものはいったいなんだろうか?
幸福の科学について重要な要素として本書で取り上げられているのは、愛・反省・光明思想である。
幸福の科学では愛というものを『平等知としての愛』と『差別知としての愛』の二種類に分類しているところがポイントだ。
平等知としての愛はキリスト教などで一般的に言われているような博愛である。一方、愛の大きさや影響には悟りの高さが関わってくる、つまり愛にも位があるという観点が差別知としての愛である。後者の観点は従来の宗教にはなかった視点であり、大川隆法もその点を強調している。
キリスト教の説く『隣人愛』からスタートし、指導者として人を導く『生かす愛』、大きな許す愛である『菩薩の愛』、時代や地域を超える愛を『存在の愛』、そして最高峰の人類愛である『救世主の愛』……と霊界の構造と同様に愛にも次元によるヒエラルキーがあるとのことだ。
反省は日々の試行錯誤の中で自らの行いを悔い改め、懺悔するものでありどのような宗教にも含まれているものである。
幸福の科学によると、人間は霊界から現世に生まれるときに記憶がリセットされ、経験に基づいて形成される表面意識をもとに様々な判断を下す。しかし日々の中で、神の思いに反したような行いをすることによって表面意識が曇り汚れていく。そしてこれらが積み重なると人生観に陰が差し、やがて悪霊と呼ばれる存在に纏わりつかれることになる。そうならないためにも、日々の中で自分の傾向性を理解し、繰り返し深く反省を行うことが大事だと説かれている。
そして悟りの第一歩はこの反省であると本書では書かれている。単純な道徳に従って〇×をつけるのではなく、霊的な自己を振り返り正しい方向性に進んでいくことによって霊的成長につながっていく(正しい方向性とはいったい何なのかは本書中に書かれていなかった)。
上記の愛と反省をもとに幸福の科学の基本的な光明思想が形成される。
光明思想は言ってしまえばポジティブ思考のようなものであり、人生は希望に満ち溢れていると考えることである。物事には必ず両面があり、長所は見方を変えれば欠点に、同様に短所も見方を変えれば長所となる。自分の駄目だと思っているところや失敗だと思うことに教訓があると捉えることが大事だと幸福の科学では説いているようだ。
この光明思想を持ち、周りの人の善意を信じて、後退をせず前に進むことを『積極的人生』と呼んでいる。
このような人生の過ごし方が幸福の科学の重要なベースとなっている。
上記のような思想をベースに日々研鑽を積むことによって、阿羅漢、そしてその先を目指すことが幸福の科学の目的のようだ。
本書の最後は人生を問題集に喩えて、幸福の科学に則った正しい人生を歩んでいけるように大川隆法の叱咤激励を経て本書は締めくくられている。
……以上が、本書で記されている幸福の科学の思想のベースだ。
といっても、幸福の科学の教えや思考に関する細かい点に関しては「〇〇という著書に記した通り~」などといった風に書かれており、別の著書を参照しなければならないようだ。
本書で分かるのはあくまでもざっくりとした幸福の科学の理解だということだろう。
3. 総評
幸福の科学の入門書ということだが、関連著書が多すぎて、そして当たり前だが宗教の世界観は巨大な体系の中にあるため、一冊ではとても幸福の科学の全貌を理解することはできなかった。
だが、少なくとも幸福の科学の基本的な考え方や目的などについてはざっくり把握できたので本書を手に取った最初の目的は満たせたと言える。
より深い幸福の科学の内容については関連書籍を参照する必要があるのだろうが、大川隆法が書いた書籍数は累計2000冊以上と量があまりにも膨大すぎるので遠慮しておこう……(信者の方で全部読破した方はいらっしゃるのか気になるところではある)。
大川隆法は2009年~2010年に年間52冊の著書を書いてギネスに載っているらしい。この執筆量は物理的に神懸かった所業である。
ブックオフ珍書発掘隊に再び幸福の科学関連の書籍が来るかどうかは分からないが、故人の公開霊言シリーズなどは怪しさ満開で非常に気になるところなので、もし見かけたら取り上げるかもしれない。
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宗教というものは無神論者の多い日本ではとかく嫌われやすい。
特に、大川隆法などは自身のことを至高神エル・カンターレと自称したり、積極的に著書を出したり、公開霊言などで常に話題を提供するエンターテイナーである。
(……そういえば本書の中には『エル・カンターレ』という単語は一言も出ておらず、大川隆法は霊界からのメッセージを伝える伝道師のような立ち位置だったはずなのだが本書が出たのちに至高神に昇格したのであろうか?)
最近では彼の長男である大川宏洋が幸福の科学と決別してユーチューバーになったりと、話題の提供には事欠かない。
現在でも幸福の科学大学が認可を受けるか受けないかで文科省と水面下でごたごたしていたりと興味深いトピックには事欠かない。
一凡人として、これからも幸福の科学のニュースがSNSなどに流れてくる時を楽しみにしている。自分からは進んで見に行くことはないが。
To Be Continued...