孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

『羽音』が鳴り止まない

私が中学生くらいの時にやった印象深いマイナーゲームに『黒ノ十三』というゲームがあります。




黒ノ十三は所謂サウンドノベルで、名前の通り13本の短編の物語をプレイするという内容になっています。


サウンドノベルとは、画面に表示される文章を読んで選択肢を選んでいく音と映像のついた小説のようなジャンルのゲームです。
選択肢によってエンディングが、場合によってはストーリーそのものがガラッと変わるのが魅力です。『かまいたちの夜』などが有名ですね(知らない人は面白いからやってみてね)。



黒ノ十三はサウンドノベルゲームとしてはお世辞にもいい出来とは言えないゲームで、正解以外の選択肢を選んだらバッドエンドへ直行してしまう上に一つ一つのお話のボリュームも薄く、割と適当な物語も多いです。(どうやら京大のミステリー同好会メンバーが執筆したシナリオが沢山入ってるみたいです)

しかしながら一応ジャンルとしてはホラー系のノベルゲームということで、プレステ初期特有の絶妙な荒さの画質も伴って、全体的に薄気味悪い雰囲気が漂っています。
(※ホラー系が苦手な方は画像検索しない方がいいと思います)

監修が有名なミステリー作家の綾辻行人氏であるところもなかなかミソで、他にも後にラノベ作家として名を馳せる(馳せてない)早見裕司氏の学生時代の作品があったりと、小説をよく読む人には『おっ』となる布陣ではあると思います。





さて本題ですが、この黒ノ十三の13本のシナリオの中に『羽音』というタイトルの話があります。



この羽音という作品は学校でのいじめをテーマにしたお話なのですが、いじめの描写が絶妙に生々しくてエグいのと、あまりにも救いのない最悪の意味でのどんでん返しの結末が印象に残りすぎて、今でも暑い季節になるとやりたくなります。
詳しいネタバレはしたくないので具体的な内容は伏せますが、主人公のいじめられている女子高生に『羽音』を出すアレがあの手この手で迫ってくる描写は最高に気持ち悪くてそれ故深く印象に残ります。
そして中盤、学校内で噂になっているおまじないを藁にもすがる思いで試した主人公がノンストップで絶望の底まで落とされる奇妙なスピード感、話の続きをもう知りたくもないけど次が気になってページを進めてしまうあの感覚。
チープな映像と文章が合わさったサウンドノベルというゲームならではの体験だと思います。


https://sp.nicovideo.jp/watch/sm307191


ニコ動にプレイ動画が上がっていたので、興味のある方は是非ご覧になってみてください。
個人的には実機プレイを進めますが、中古相場が思ったより高かったので……サウンドノベル好きなら買って損はないと思いますが。





ちなみにこの羽音を執筆したのはToriko.今橋さんです。

…………いや、誰やねん。

ネット上で調べてみてもその時限りのペンネームらしく、素性は一切わかりませんでした。あれだけ人を惹き付ける文章をかける方なのだからほかの作品もぜひ見てみたいところです……。



この黒ノ十三には、羽音以外にも面白いシナリオが2,3個くらいはありますので気になる方はプレイしてみるのもいいかもしれません。
僕は羽音以外やり直す気にはなりませんが、早見裕司氏の作品なんかはかなり完成度高いし、文章は大したことないけどシンプルに映像が怖いシナリオも何本があります。


ボリュームの薄さと操作性の悪さから決して名作とはとたも言えませんが、『羽音』を始めとする妙に脳に張り付くシナリオを出した奇作として、私はたまにこのゲームを振り返ることがあると思います……。