孤独な弧度法

ブログのタイトルは完全に語感だけで決めました。そこそこ良いブログ名だと自分では思っています。

アルバイト体験談 〜印刷工場編〜

好評につき(好評ではない)、派遣労働に関する話を続けます。

今回は私が大学1年生の夏から冬にかけて、小遣い稼ぎのために週2〜週4でやっていた大阪の印刷工場の夜勤の話です。このバイトしかしてなかった時期もあるくらいで、1年生の夏から冬までの間の半年間はめっちゃやってました。働いている中でムカつくことも沢山あったのに続けられたのは、夜勤だから大学の合間に入れて学業と両立出来る(当時のGPA1.7くらいだったので全く出来てない)ことと、たった半日間夜通し働くだけで1万円が翌々週には振り込まれるという手軽さからでしょうか。
今でも、あの工場では現場監督にやつ当たりされながらパート達が死んだ顔で封筒をダンボールに詰めているのだろうか……そう思うと懐かしい気持ちと反吐が込み上げてきます。



大阪府の印刷工場】
週明けに給料が振り込まれるというメリットのおかげで、懲りずに同じ派遣会社が募集しているブラックバイトに入ってしまうわけです。
派遣会社で常に募集されているバイトは、トラックの助手席にのっての自販機補充手伝い(これもやったことあるけどカスでした)と印刷工場での日勤/夜勤の2種類だけでした。
おいしいバイトもない訳では無いのですが、割のいい仕事はすぐに埋まってしまうため残り物はいつもこの2つです。


私はそのうち、日給の高い印刷工場の夜勤に入ることにしました。
立地が大学からまあまあ近く、大学までの通学定期を利用して交通費を最大限度(といっても上限600円だが)受け取ることができたからです。この浮いた交通費で休憩時間に食べる夜食(安いパン一個)を買っていました。


大阪某所の田舎町の田んぼの奥へと歩いたところにある無骨な印刷工場。行くのを辞めたずっと後で知ったのですが、実はそこそこ有名な印刷会社の所有する工場とのことでした。
夜の21時前に真っ暗な畦道を抜けて恐る恐る工場の受付へと進み、警備員さんからカードを貰います。セキュリティ皆無のちゃちいロッカーに貴重品以外の荷物を預けて、洗濯がされてるか怪しい不潔なバイト用のキャップ帽(マジックで会社名が書かれている)を被って、工場の中へ入ります。
工場全体は派遣会社の広告での触れ込みにあった通り、確かにそれなりに新しく清潔でした。しかしどこかどんよりとした雰囲気が漂っています。
まず現場監督の元に派遣労働者が集まって点呼をとり、散り散りに割り当てられた機械の元に向かい担当の正社員の指示通りに作業をする形でした。
工場内に広い空間の中に印刷用のデカい機械が等間隔で並んでいて、それを正社員(失礼ながらいいとこ高卒の奴だろうなと思ってました)が操作してバンバン印刷していくスタイルです。

印刷工場での作業はまさに『軽作業』で、基本的にはベルトコンベアに乗って次々流れてくる封筒を束にして掴んで輪ゴムで縛ってダンボールに入れる。ダンボールが一杯になったらコンパネの上に乗せて新しいダンボールにまた封筒を詰めていく。たったこれだけです。
ベルトコンベアのスピードはそこまでめちゃくちゃ早い訳でもないので、作業員は基本的に1人です。一部のスピードの早いベルトコンベアなどでは複数人でやることもありますが。それゆえに襲ってくるのは猛烈な退屈さとどうしようもない眠気です。昼間ずっと眠っていたとしても作業中はこの緩慢な単純作業によって、猛烈な眠気が襲ってきます。
優しい社員さんが担当だと「起きてる?笑」みたいな感じで優しく肩を叩いて起こしてくれるんですが、社員によっては苛立ってめっちゃ怒鳴られたりします。そうなった時の気分は最悪です。
眠い目を擦りながら必死に作業をし、1時間くらい経ったかなとふと時計を見ると10分しか経ってなかったというような精神と時の部屋状態がざらにあります。実働時間は1日あたり21:00-9:00で休憩1時間の11時間ですが、感覚としては110時間くらい労働した気がします。1時間休憩が入るのも21:00から始めて2:30くらいなんで本当に単純労働地獄です。

印刷工場でのトップクラスの限界エピソードとしては、あまりにも眠いので1時間休憩の時にトイレの個室で横になって仮眠を取って起きたら休憩時間終わって5分過ぎてて、慌ててラインに戻ったら社員の人に「ひとりが遅れたらラインが回らないんだからな!お前ふざけんなよ!」と怒鳴られたことなどがあります。トイレの個室で地べたに寝そべって寝るのもやばいしその後社員にブチ切れられる時もかなり辛かったです。

その他にも私が槍玉に上がった訳では無いのですが、現場責任者が正社員を点呼している最中に横のロッカーに作業用の軍手を取りに行った派遣の人が、いきなり現場責任者に「今点呼してるだろ!お前なんなんだよ!帰るか!」ととばっちりを食らってそのまま30分くらい説教されてて本当に地獄みたいな雰囲気になってました(他の派遣は業務開始してるけど怒鳴り声は静かな工場内でめっちゃ響く)。

印刷工場で派遣で入る人とは別にパートの人がいるのですが、昼間は主婦とかのおばちゃんが多いんですが深夜帯は謎のオッサンばっかりでした。同じラインになるとめちゃくちゃ上から目線で人生について語ってきたりしたのでずっと苦笑しながら相槌を打ってました。面倒臭いオッサンに対するあしらい方を私はこの工場夜勤で学びましたね。

とにかく感情を消して機械のようにベルトコンベアから流れてくる封筒をダンボールに入れていくこと、これが全てでしたがそんな作業を夜通しやると本当に頭がおかしくなってきます。
色々なバイトをしたりしてきた今振り返ってみると、工場夜勤をレギュラーでしている人は本当に変わってる人が多かったと思います。機械のような作業に徹しているうちに人間性に段々ヒビが入っていくのでしょうか……?

他にバイトをしてなかったのもあって私は金稼ぎのために半年間この印刷工場で働き続けたのですが、ある日ダイノジの大地に似てる正社員にすごく粘着されて一晩中怒られ続けたところでプツンと糸が切れてそれ以降は働かなくなりました。むしろ良く半年間も続けれたなと思います。





私が半年間印刷工場内で夜勤の経験から言えることはたったひとつです。



あらゆる工場の単純作業は、速やかにロボットに置き換わるべき。



これだけです。
工場のラインは『人間』がやる仕事じゃない。頭を使わず、身体すらも対して酷使せず、ただ時間を浪費し苦行に耐えて日銭を稼ぐ……。誰もやりたがらない単純作業だから常に人手不足で、現場の責任者は常にイライラして派遣バイトに八つ当たりをし、埋め合わせは人格のぶっ壊れたパートさん(ライン作業が彼や彼女を狂わせたのかもしれない)か外国人労働者がやっています。
介護などの福祉の職業と違い、本当はロボットがすぐにでも代替できる作業であるにも関わらずそれがされていないところも前時代的です。
ああいう類の単純労働が完全にロボットに取って代わる時代が早く来ることを心から願います。

主観ですが、あの印刷工場で働いている人で幸せそうな人は一人もいなかったから。